最近、就職や転職時の履歴書をPDFで提出するように求める企業が増えてきたという記事を読んで、
そういう時代になってきたのかと感慨にふけっていたのですが、
これに対しWeb上の記事で履歴書のPDF提出を求められていても手書き履歴書をコピーしてPDFファイルにして出すべき
という意見を見かけてちょっと驚きました。
私としてはPDF履歴書の提出を求められて手書きの履歴書のコピーを作成するなど馬鹿げていると考えているので、
その理由を述べてみたいと思います。
PDFファイルは基本的にベクターデータで記述するものであり、少量のデータでどのように拡大縮小しても美しく表示でき、
どのような環境でも同じように見えるという特徴をもっています。
手書きファイルをコピーしてPDFファイル化したのでは、このPDFならではの長所をぶち壊してしまいます。
スキャナやコピー機で600dpi程度で手書き履歴書をコピーしてPDF化すると、データは結構大きくなりますが、 ページ中の細かい文字は拡大するとかすれたり潰れたりしているものが目立ちます。 写真画像部分などは拡大したら壊滅的です。 といって、これ以上解像度を上げてコピーをするとファイルサイズが大きくなり、メールへの添付、 ファイルのコピーや表示が重くなり扱いが不便です。もともと手書き文字はどんなに丁寧に書いても、 ちゃんとしたフォントよりは読みにくいのに、さらに品質を下げてどうしようというのでしょうか。
さらにいうならば、コンピュータでちゃんとした履歴書PDFを作成してそれを送付するなら、それは原本を送ること、 少なくとも原本と同じ品質のものを送ることになりますが、手書き履歴書をコピーしてそのデータをPDF化したものを送るということは、 いうならば原本はとっておいて、劣化コピーを相手に送りつけるということになり、相手に対して失礼ではないでしょうか。
PDFファイルは単なる画像ファイルとは違って、文字データの位置情報や内容の情報も持つことができます。
PDFに表示された文字は基本的にはコピー&ペーストして別のアプリに持っていくことができます。
つまりコピペできます。
ただ、手書き履歴書をコピーしてPDF化すると、画像データしかPDFに含まれないことになり、テキストのコピペができなくなります。 ということは、履歴書審査後に面接に来るようにメールを送ろうとして履歴書上のメールアドレスをコピペしようとしても、 それができないということになり担当者がイライラすることは間違いないでしょう。
普通に履歴書PDFファイルを作成していれば、例えば検索プログラムなどで内容を検索して合致したPDFファイルを表示する ということが可能なのですが、手書き履歴書をコピーしてPDF化したものではテキストデータが取り出せず、 データとして扱うことができません。このようなことになってしまうのは、 そもそも文字データが主体である履歴書データをコピーして画像にしてしまうことが原因です。 PDFで提出してくれという趣旨を無視していると言えるでしょう。
手書き履歴書をコピーしてPDF化するには当然手書き履歴書原稿が必要です。 これをコピーするのならば目立つ修正の跡は残せず、最後のほうで少し間違えても最初から書き直しなどということになってしまいます。
書き終わったものを編集することもできないので、原稿の推敲中によりよい書き方がひらめいたとしても、 その部分だけの修正は不可能であり全部書きなおす必要があります。 また、一部だけ修正して別の会社に提出するための履歴書を作成することもできません。
せっかく少量のデータで品質の高い履歴書を作成できるPDFで提出できるのに、
わざわざ時間と手間をかけてより低品質のものを作成する必要はどこにもないでしょう。
そのような時間と手間は履歴書の内容の品質を向上させるのに使うべきです。
履歴書をPDFで提出する企業が増えている理由は、本当のところはその企業に聞いてみないとわかりませんが、 以下のようなことが考えられます。
このような企業側がPDFでの履歴書提出を求める想定される理由から考えても、 手書き履歴書をコピーしてもPDF履歴書が作成できるからと言って、 わざわざ時間と手間をかけて品質の劣る手書きコピーのPDF履歴書を作って提出するのは愚かなことでしょう。
上で、簡単にきれいなPDFの履歴書を作れると述べましたが、 ではどうすれば拡大縮小してもきれいに見えるちゃんとした履歴書PDFが作成できるでしょうか。 あまりよく知らない方もいるかもしれませんので、私が知っている範囲の知識で説明します。 まず一般的には以下のような手段でPDFの履歴書が作成できます
普通に考えれば、PCが使えて簡単に美しいpdf履歴書が書けるのなら、 わざわざ手間と時間をかけて手書きで履歴書を書いて、その劣化コピーを提出しようとはしないと思うのですが、 世の中にはそうするべきだという意見があります。その意見を検討してみます。
手書き履歴書のコピーをしてPDFファイルを作れば、熱意が伝わりやすい。 だからPDF提出を求められていても、履歴書を手書きしたものをコピーしてPDFファイルを作るのだという意見があります
手書き履歴書のコピーをしてPDFファイルを作るのは、
確かに普通に履歴書を作るのより大幅に時間と手間をかけていますが、
そのような品質を落とすための努力が評価されることがあるのでしょうか。
そもそも企業は採用するときは基本的には仕事ができるかどうかで採否を判断するはずで、
熱意を持ってやったかどうかは重要な基準ではありえません。
しかも、その熱意が見当はずれというか、むしろ品質を悪くするような方向の熱意では、 採用しても無駄な残業ばかりしそうで、私が採否を決定できる立場にあるとすれば、 まずそのような人を採用することはないでしょう。
手書きの丁寧な文字は読みやすく好印象を与える、 だから手書き履歴書のコピーをしてPDFを作成すべきだという意見があります。
しかしながら、手書きでいくら丁寧な文字を書いたところで、 読みやすさは専門家が時間をかけて作ったフォントには及びません。 PDF提出と言っているところに手書き文字のコピーを出されたら、 この人はコンピュータを使えないのかなという印象を持つだけです。
手書き文字はその人独自のもので個性は出せるかもしれませんが、 履歴書という、これまで何をしてきてこれから何ができるかを示さなければならない文書で、 文字の形で個性をだしてどうするのでしょうか。履歴書は書道の作品ではありません。 内容で好印象を与えるべきでしょう。