のんびり朝寝したが、どうも脱力感あり。今月末からは激務が続くので、今のうちにゆっくり充電しておかないといけないのだが。昼飯の後、ちょっと部屋の片付け。あちこちに積んである本を整理してたが、本棚はもう満杯。最近買った本のうち、おそらくもう2度と読み返さないであろう本を、とりあえず20冊ばかりピックアップして近くの古本屋に売りに行く。
古本屋の店主ってのは、気難しい因業そうなオッサンに決まってるのだが、この小汚い店のオッサンも、いかにも古本屋の親父という風情。ここ半年の間に発売された新刊ばかりだが、一冊づつひっくり返して奥付を点検。長い間かかって、結局、「ま、2000円なら貰うけど」だって。一冊100円の計算だったら、別にああまでシゲシゲと点検せんでもいいのになあ。
別に金が欲しいわけではなくて、引きとってもらわないと本棚が片付かなくて困るので、即座にOK。私の基準では、一度読んだらもう結構というクズ本だが、せっかく出版されたんだし、ゴミで捨てるよりは、まだ誰かの手に渡るほうが地球にやさしいリサイクルになるってもんだ。
本の片付けを継続してたら、途中まで読んで放り出してあった「中国権力核心」(上村幸治・文藝春秋)を発見。つい続きを読んでると、そのまま最後まで読みきってしまった。
筆者は新聞記者として、天安門事件当時の北京にいたのだが、まったく何が起こったか分からずに、群集と共に銃声を聞きながら、あちこちを逃げ惑う実体験を語る部分が実にリアルである。平和な場所に住んでると、まったく想像もできないが、軍隊の発砲する銃声が自分の身近で聞こえ、撃たれた人を間近に見るというのは、頭で考えているような簡単な体験ではないだろう。
もっとも、この本の主眼は、導入部のそういう筆者の体験よりも、中国の権力中枢を巡る権力闘争の実態に、筆者が現地の関係者かの情報をもとに迫ってゆく部分にある。
開放政策を推し進めた当時の中国の権力を一手に掌握していたケ小平は、経済の発展は大いに望んだが、中国共産党の支配を揺るがすような政策を一切認めるつもりはなかった。しかし、経済的にゆとりが出来たら、今度は自由を求めるのは人間の自然な欲求であって、ケ小平の両方の要望を満たすのは至難の技だ。
ケ小平直系の改革派で、後継者ナンバーワンと目された胡燿邦主席は、天安門事件の学生の主張に理解を示したが、体制の崩壊を恐れる主流派は態度を硬化させ、胡燿邦だけを置き去りにして開放政策のドアを閉めた。当時の国家主席、胡燿邦の突然の失脚劇である。
この本で印象的なのは、胡燿邦を糾弾する共産党最高幹部の会議が続いていた時に、胡燿邦の秘書が目撃した話だ。
会議の最終日、会場から出てきた疲れきった胡燿邦は、普段から仲のよかった政治局員にこう尋ねる。
「おい、言ってくれ、あの話は私が言ったことなのか」
その政治局員の、「そう、私は覚えている。あなたが言ったのだ」という回答に、胡燿邦は信じられないという顔で首をふる。タバコをつけようとした手は震え、やがて、その目から涙が流れ出し、結局彼は大声で泣き出してしまった。
この事件を目撃した秘書は、項羽もこのように大泣きしたのに違いない、と考えた。劉邦に追われてこれまでと観念した項羽は、観念した後に涙を流す。史記に書かれた「四面楚歌」の故事である。
当時の中国国家主席、共産党総書記を勤めた最高権力者をも陥れる、陰謀と捏造と糾弾が延々と続く密室での権力争い。すぐれて政治的な民族である中国人が本気で争う、すさまじい陥穽に満ちた中国共産党の暗部にくらべれば、日本の政治の派閥争いや密室での談合なんぞは子供の砂場遊びのようなものである。
まあ、こういう、オーウェルの「1984」を思わせる恐ろしい話を読んで見ると、政治にしてこれなんだから、まして経済で日本が中国に進出して儲かるわけないよなあとつくづく考えさせられる。
日本の銀行は中国の政府金融機関に巨額の金を融資しているが、これはおそらく踏み倒されるのは確実だ。踏み倒されたらどうなるか。日本国民の税金でまた銀行救済である。
中国に社運をかけて進出したヤオハンは、巨額の投資をしたが、赤字続きで倒産。和田社長が最後まで、「中国からの投資が決まったから大丈夫だ」と発言してたのを覚えてるだろうか。しかし援軍は来なかった。騙されたのである。ムシられるだけムシられて、あとは見殺し。これが中国のやり方。気の毒な話だ。
天安門事件の時、一社だけ日本人駐在員を帰国させなかった某企業は、「これこそが中日友好の鏡だ」と中国政府に褒め称えられたが、今や工場は閉鎖して撤退。鏡だったらもっと優遇しろよ。
人件費が安いというメリットが歌われたが、外国企業だけにかかる税金があったり、国が現地従業員の人件費をピンハネするから、ちっとも人件費なんて安くないのである。役人の腐敗は横行して、賄賂を出さないと何もできない。
そういえば、うちのとある部門も、北京や上海に10年ばかり人を置いてビジネス拡大を図っていたが、先月でとうとう白旗揚げて撤退。やっぱり、日本人に軽々と儲けさせてくれるような、そんなたやすい国ではないのだな、中国ってのは。 余談だが、Windows95の時は、「ケ小平」ってのは、変換できなかったのだが、今や一発変換。「胡燿邦」、「趙紫陽」も一発変換とは驚き。「江沢民」もOK。ただ、現在の中国の首相、「しゅようき」はダメ。「種陽気」なんて出てくる。「金」偏に「容」と書くあの字が無いんだなあ。 |