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2001/02/25 「料理人誕生」

「料理人誕生」(マイケル・ルールマン/集英社)読了。原題は、「The making of a chef」というらしいが、米国でもっとも有名な料理学校、カリナリー・インスティテュート・オヴ・アメリカ(CIA)にジャーナリストが入学し、実際に授業を受けて、卒業するまでをレポートしたノンフィクション。

最初の9週間は、「美食入門」、「調理の数学」、「衛生と栄養」、「素材見極め」などの講義や肉類の実際の解体の実習。それから、主としてフランス料理の基本を身につける調理技術の実習クラスが約30週間。

それが終われば、エクスターンシップとして、外部の様々なレストランに修行に出て賃金を貰って実習。そしてまた学校に戻り、6週間はワインとメニュー、レストラン企画、法律の講義。そして最後の12週間は、CIAの経営するレストランで、コックとウエイターを交代でやりながら、総仕上げの実習。すべてのコースを履修しておよそ1年7ヶ月。あと2年学ぶこともでき、4年間履修すると4年制の大学卒業と同様の資格となるのだそうだ。

単に食べることが好きだったライターが、厳密に計算された3週間単位のカリキュラムで鍛えられ、調理の理論と技術を身につけて行くと共に、レストランの厨房でも通用する料理人として成長してゆく。この本は、そういう成長物語として読んでも面白いし、同時に紹介される色々なレシピや調理の科学、料理学院で生徒を教える教授役の人生や、レストランの裏側を紹介するノンフィクションとしても興味深い。

次々に注文が殺到する調理場。「チキン、ファイア!」「ビーフ ファイア!」と料理長の指示に従い、調理が始まる。どんなに忙しくとも、失敗したものはお客に出すわけにゆかない。しかし、ひとつの皿だけ作成が遅れれば、一緒に注文したテーブルからは文句が出る。それぞれの分担をこなしつつ、チームワークを考えて動かなければならないまさに戦場のようない忙しさ。

夜半過ぎに注文の嵐が終われば消耗しきってクタクタだが、なにものにも替えがたい達成感もあるのだと著者は言う。まあ、日本も同様だが、料理人は、毎日が真剣勝負である。休みもなかなか取れず、クリスマスもサンクス・ギヴィングも仕事している、というところがなかなか厳しい商売ではある。

韓国や台湾からも生徒が学びに行ってるようだが、日本からは留学してないのだろうか。「愛の貧乏脱出大作戦」も、町場のシェフに厳しくやってもらうよりも、こういう学校に候補者を叩きこんで鍛えなおしたらいいかもしれない。もっとも、ああいう番組に出てるような怠惰な料理人では、おそらく途中でギヴアップだろうなあ。