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2001/05/27 「池波正太郎の銀座日記」

昨日は午前中に日記アップしてゴロゴロしてたら、ついウトウトと昼寝。ちょっと体調がよくないせいもあるが、実に怠惰な1日。

昨日の夜は、「池波正太郎の銀座日記」文庫本で読了。以前にも読んだことがあるのだが、引越しの時に散逸していた。酒豪、健啖家で知られる、「鬼平犯科帳」の作者、池波にとって銀座は、小学校を出て茅場町の株屋で小僧をしていた頃から毎日のように通った、自分の庭のような懐かしい遊び場であった。

この日記は、池波の最晩年に、雑誌に連載されたものだが、肩肘張らない気楽な場所が好きで、グルメというよりグルマンと呼んだほうがふさわしい池波が、だんだんと食事が細くなり、肉体も気力も衰えてゆくありさまが、淡々とした筆致で記録されている。

この本の最後は、「ベッドに入り、いま、いちばん食べたいものを考える。考えてもおもい浮かばない」という、元気だった頃の池波では想像もつかなかったような虚無的な感慨で終わる。映画の試写会をハシゴし、ワインや日本酒飲みながら、煉瓦亭のロースカツレツや、新富寿司の握り寿司や、野田岩のウナギを食べ歩いていた頃の池波の、嘘のような衰え。

池波が急性白血病で亡くなったのは67歳の時。考えてみると、うちの親父がちょうど同じ年だ。まあ、日本とオーストラリアを往復して、向こうでは毎日ゴルフやるくらい元気らしいから、当分は大丈夫なはずだが、こういう本を読むと、やはり人間にとって逃れることのできない、寿命や衰えについて考えさせられる。