夜は、「神秘の次元」再読。アメリカに進出する前の、バグワン・シュリ・ラジニーシのヒンドゥー語による説話を翻訳した本。ラジニーシは、インド生まれの宗教家であるが、21歳にして光明を得た(いわゆる悟りを開いたと同義)と自称し、多くの信者を集めた。 アメリカに進出して、オレゴンに巨大なコミューンを形成したが、コミューンの中は麻薬とフリーセックスにまみれ、「セックス・グル」と呼ばれた。寄進によって生じた財産は莫大で、何台ものロールスロイスを乗りまわした。教団のナンバーツーの座を巡って、弟子達の間では暗殺まがいの事件まで起こり、最終的には、アメリカ政府から、麻薬取締法違反と所得税法違反で国外退去処分を受けたのだが、なんだかオウムの麻原の先覚者のような、いかがわしいオッサンである。 しかし、この伝道初期の説法は、不思議な魅力に満ちている。レトリックも巧みだが、「明かにこの人間は、我々一般の人間の知を超えた何物かを持っている」、「我々の経験を超えた何かを体験している聖人である」、という不思議な印象を受けるのである。それはちょうど、聖書や仏典を読む時に感じる、奇妙な齟齬と畏敬の念と似ている。インド人は、たとえクワセモノにしても、実にスピリチュアルで深い。そこに感心する。 聖なるラジニーシの末路を思い起こして、人間がいかに堕落しやすいかということを念頭に読み返すと、何度読み返しても、たいへんに含蓄にあふれた本だ。晩年の日本翻訳本は、「和尚」という名前で出版されていた。 |