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2002/03/19 それは違う!

「それは違う!」(日垣隆/文春文庫)読了。

第1章 『買ってはいけない』はインチキ本だ、第2章 もう一度いう『買ってはいけない』はインチキ本だ、と続く最初の2章は、以前に読んだ記憶あり。文藝春秋に掲載された、「買ってはいけない」批判の論文を加筆したものである。

「買ってはいけない」の著者達に共通するのは、「大企業が製造するものはすべて悪」という凝り固まった思想である。化学物質の毒性などの化学的データについても、自分達の主張に都合の悪いところは隠し、都合のよいデータは、追試で立証されていないウサン臭いデータでも鬼の首を取ったように宣伝する。ウソや誇張だらけで、実に信用ならない主張ばかり。

というのが、日垣の「買ってはいけない」に対する批判。

もっとも、だからといって、「買ってはいけない」であげつらわれた製品がみんな素晴らしいというのではない。「買ってはいけない」を書いた著者達の、真実を伝えるのではなく、自分達の主張に都合いいことだけを伝える態度。平気でウソ、欺瞞、誇張を連発する態度を問題としているのであった。

自分達の主張のみが正しい、この正しい主張を伝えるには、ちょっとくらいの欺瞞はゆるされる。そういう態度は、ちょっと「死刑廃止論者」の運動や主張に通じるものがある。

ま、確かに一時はブームになった「買ってはいけない」だが、ブームも急速に沈静化したのではないだろうか。すべての製品が安全だとは思わないが、安価に快適な生活をするためには、ある程度甘受しなくてはいけないリスク、受容しうるリスクの程度というものも考慮にいれなければならない。そういう常識は、別に「買ってはいけない」の著者達に教えてもらわずとも、市井の生活者には、おのずから備わっているものと思うが。

「近年、環境ホルモンの影響で若者の精子数が急減している」というのは、科学的論拠のない俗説である。ダイオキシンの毒性は、極端に誇張されて伝えられている。ダイオキシン撤廃論者の論法では、今までに何万人もダイオキシンで死んでなければならないのだが、そんな死者は出ていない。

この本の他の部分に書かれている上記のような主張も、意外であるが、なかなか説得力があって興味深い。著者の主張では、こういう、「環境」を声高に叫んで商売にする「環境屋」が、この世間には大勢いるらしい。ま、何が正しいのか、あれこれと悩んでも、すぐには分からないような妙な世の中になってきた。