「水道水にまつわる怪しい人々」(湯坐博子/三五館)読了。「夢の浄水器が教えてくれた命のこと」と副題が付いている。 この著者は弁護士だが、淀エンタープライズというところが製造販売している、「夢の浄水機」の利用者、かつ信奉者である。国民生活センターは、この「夢の浄水器」を含めたいくつかの機種のテストを行い、ろ過性能には疑問があり、雑菌が繁殖していると発表した。 この著者の主張は、このテストが一部大手浄水器メーカーと生活センタの癒着によって行われた、実に恣意的で科学的にもズサンなもので、真実を歪めて伝えているということだ。この件は裁判にもなっており、著者が弁護士を務めている。 「夢の浄水器」とは、風化した雲母、石英、長石などを含む自然原料によって水をろ過し、ミネラル溢れる自然水を作るものだという。一般の浄水器で作った水では、金魚は死ぬし、プラナリアも生きられない。しかし、著者の勧める浄水器は、自然の岩清水を作るのだと。 特定のエコロジー関係の機械を盲信する人には、どこかウサンクサイところがあるのは事実。この浄水器の性能についても、私が試した訳ではないので、論評はできない。しかし、この本での著者の主張は、ある程度の一貫性が認められ、国民生活センターのアタフタした対応を見ても、おそらく、何か裏取引によって、恣意的な検査結果が公開されたのではないかという疑念は確かに誰でも抱くだろう。 浄水器についての主張以外で、この本が面白いのは、水道の残留塩素は有毒であり、日本の水道行政は、国民の生活を危機にさらしているという主張。ヨーロッパでは、昔から水源の汚染排除には細心であり、周囲を立ち入り禁止・禁猟区にするなどの対策を行っている。テムズ川の水を原水とするイギリスでも、河川水を砂礫層に導水し緩速ろ過した浄水を供給しているのだそうだ。 しかし、日本の(特に都市部の)水道は、汚れきった川の下流で水を採取し、浄水場で大量の塩素を投入することで大腸菌を殺し、即席に水道水を作っている。大量投入された塩素と汚濁物質は、化学反応によりトリハロメタンなどの有機塩素化合物を生成し、日本の水道水は、健康に取って深刻な危険をはらんでいるというのが著者の主張だ。 日本のように、水道水を薬づけにしている国はないのだそうだが、そもそもは、アメリカ進駐軍が、塩素をドカンドカン投入して食中毒等のリスクを低減する手法を持ちこんだとも著者は概括する。 以前、TV番組で、荒川かどこかの浄水場の紹介番組があった。まるでドブ水のような濁りきった川の水に、大量に空気を吹き込んで攪拌している場面には、やはり驚いたものだ。あんな汚い水でも、大量に塩素を投入すれば飲めるようになると主張されても、やはり見てしまうと実に気分が悪い。東京に住む我々が飲んでいるのは、あんなに淀んだ汚い水なのだ。 この著者が、国民生活センターと癒着し、他メーカーに不利な検査結果を捏造させたと非難しているのは、「クリンスイ」を製造する「三菱レーヨン」。著者によれば、三菱レーヨンを始めとする中空繊維によって細菌をろ過する浄水器は、抗菌と称して活性炭に銀をコーティングしており、この銀が水に溶出して、更に健康に悪いという。う〜む。 そういえば、うちのキッチンにも浄水器がビルトインされており、先日カートリッジを交換したばかりであった。あれは、どこのメーカーであったか、早速確認…、アッ!。 「クリンスイ」だ。なんかどうも、気持ち悪い話である。ははは。 |