「聖書の暗号2」(マイクル・ドロズニン/角川書店)読了。前著は新潮社から1997年に出たのだが、出版社が変わって続編の登場。 ヘブライ語で書かれた旧約聖書冒頭のモーセ5書。このテキストから全てのスペースを取り去り、約30万字を1行の文字列データとする。このデータを、何文字か一定の間隔でスキップして読んで行くと、特定の意味ある単語が現れる。データをスキップした文字数を行の長さとして改行して並べると、その特定の単語の近辺に、それに関連するキーワードが次々に現れてくる。人類史上の大事件や、ユダヤの聖人の名前や生年月日もすべてこのモーセ5書に含まれている。この、スキップ・コード:等間隔文字列こそが、3000年以上前に旧約聖書に封じ込められた暗号だというのが前著の主張。 主張の当否はさておき、この第2作は、前作より更にパワーアップ。911同時多発テロもまた聖書の中に予言されていた。そして、中東の政治家の名前と共に、2006年、中東で世界を滅亡に導く「原爆によるホロコースト」、「世界戦争」が行われることを示す部分が聖書のあちこちに現れている。あと4年しかない、と著者は叫ぶのである。 この本のもうひとつの柱は、いったいどんな存在がヘブライ語聖書に暗号を組み込んだのかという探求。あちこちで発見される「オベリスク」というキーワード。聖書の暗示は、「リサン」という死海近くの半島の名前と共に、その場所で全ての聖書の暗号の秘密を解く「オベリスク」、あるいは「鉄の聖櫃(Ark)」が見つかる事を告げているのだと言う。そして、著者の暗号解読(というより妄想に近いが)は、古代の異星人の来訪と、地球生命のDNA操作へと広がってゆく。 しかし、ここまでくると、なんだか、インディ・ジョーンズ第4作のシナリオのようだな。あるいはSFとして読むならば、実に面白い本ではある。ドロズニンという人も、映画化権をどこかに売れば、よい商売になるだろう。 第一作の「聖書の暗号」については、最初に読んだ時に浮かんだ疑問を日記(97/10/26)に記した。 暗号が成立する為には、3000年前に成立した旧約のモーゼ5書が、一語の狂いや書き移しのミスさえもなく現代に伝わってなければならないが、そんなことがありうるか。現存する最古の聖書写本は紀元後11世紀にしか遡る事ができない。今回の本を読んでいても、基本的に、前著で感じた疑問はまったく解決されていない。ヘブライ文字と英語アルファベットの対応表すら呈示されてないのだから、ここに、「ブッシュ」、「クリントン」と書いてあると言われてもねえ。 この本を読んでて、もうひとつ気になったのが数字の扱い。そもそもヘブライ文字には、数字を表す文字がない。そこで22文字からなる普通のアルファベットを数字代わりに用いるのだそうだ。ひとつの文字がアルファベットにも数字にも読めて、縦横無尽好きな間隔で探してもよいのなら、いくらでも都合のよい数字を見つけることができるだろう。2006年(ヘブライ暦5766年と出ているそうだが)という年号も信じがたい。ドロズニンという人も、「ノストラダムスの大予言」書いた、五島勉に似てきたような気がする。 しかし、この本で本当に怖いのは、この著者が自分の主張を信じきっており、しかもなかなか行動力があるところ。ドロズニンは、パレスチナのアラファトや、イスラエルの閣僚達に実際に会って、自らが発見した「世界の終わり」予言を説いて回っているのだ。ブッシュ大統領にもメッセージを送っている。さらに不気味なことに、著者に実際に会ったアラファトは、バイブルコードの予言を信じている節が見られるのである。 もしも、アメリカ大統領とパレスチナの指導者とイスラエル首相が、揃いも揃って中東で2006年に世界最終核戦争が始まると信じこんでいたとしたら、現実世界はどうなるか。「聖書の暗号」よりも、そっちのほうがずっと不気味な気がするのであった。 |