「じゃがいもが世界を救った」(ラリー・ザッカーマン/青土社)読了。表紙絵は、ゴッホの「じゃがいもを食べる人々」。茹でたじゃがいもだけの夕食を取る貧しいオランダの農民を描いた絵だ。Googleで検索すると、ここにも絵が掲載されている。 じゃがいもの原種は南米原産。スペイン人がヨーロッパにもたらしたのは16世紀。寒冷の痩せた土地でも育ち、収穫性が高い。ビタミンに富み、栄養豊富な作物でもあるが、ヨーロッパでは「悪魔の植物」、「毒がある」、「貧乏人の食物」とされてなかなか栽培が広まらなかった。しかし、貧しいアイルランドの土地で、じゃがいもは人々の命をつなぐ作物として大規模に栽培されるようになり、イングランド、フランス、そして新世界アメリカにもその栽培が広がってゆく。 いかに、「じゃがいも」が「飢え」から世界を救ったかという視点からのみ見た歴史という面で、実に面白い本だった。「フィッシュ・アンド・チップス」の印象から、イギリスではずっと昔からじゃがいもがポピュラーだったかと思っていたが、なかなか意外でもある。ただ、ドイツやオランダなどの「じゃがいも」事情も扱えたら、全ヨーロッパの「じゃがいも文化」を俯瞰できたと思うが、この本で扱ってるのが英語圏とフランスだけなのがちょっと残念。日本への伝来は、やはり長崎にオランダ人が持ち込んだのだろうか。「肉じゃが」なんてすっかり日本料理だもんなあ。 |