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2003/09/28 「モナリザは高脂血症だった」

「モナリザは高脂血症だった」(篠田達明/新潮新書)読了。医者でもある著者が、古今東西の肖像画から、医学的な情報を読み取るというもの。モナリザが高脂血症ではなかったかというのは、前にもどこかで読んだことがある。絵をよく見ると、左目の目頭付近に脂肪粒のような不思議な盛りあがりが描かれている。中世イタリアの富豪は脂肪に富んだ食事をしていたから、高脂血症だったのではないか、というのである。ダ・ビンチがそこまで描きこんだのかどうかは不明だが、推論としておもしろい。

ルーブル所蔵のレンブラント作「バテシバ」。旧約聖書を題材にレンブラントが自分の愛人をモデルに描いたとされる裸像画。画面の女性の左乳房わきには妙な陰がある。現代の医師が見ると、進行した乳ガンによる陥没であると明らかに分かるほど病変が進行しているのだそうだ。レンブラントはおそらくそんなことはツユ知らず、ただ見えたままを描いたのだろう。3百数十年前の人物について医学的診断がついた稀有な例。

ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスの素足には外反母趾が認められる、手が極端に小さく描かれた秀吉の肖像画は、宣教師フロイスが伝える秀吉の先天性多指症を証明している、ミロのヴィーナスには妊娠線がある、など、なかなか興味深い話が多かった。医学的診断ということになると、肖像画も彫像も写実的に表現されている西洋美術のほうが含まれている情報量が多いようだ。