「透視も念写も事実である〜福来友吉と千里眼事件」( 寺沢龍/草思社)読了。 明治時代の末期、「千里眼」、「透視」あるいは「念写」ができる、高橋貞子、御船千鶴子、長尾郁子という女性超能力者が続出した。「リング」の貞子のモデルであるとも言われるが、この超能力者を科学的に調査しようとしたのが東京帝国大学の心理学者、福来友吉であった。当時の新聞にも大きく報道され、実験の不備を巡って「千里眼事件」と称される騒動ともなったこの超能力者を巡る顛末を辿るドキュメンタリー。 千里眼や念写を巡る細かい顛末も描かれてなかなか興味深いが、実験者が反対側を向いて立会人に透視の様子を確認させない、人目のない別室にこもって時間をかける、念写の場合、実験前に写真乾板を別室に置いておかなくてはならない、映す字は前もって知らせておかなくてはならない、実験前の乾板を入れたカバンの油煙を塗った留め金に、明らかに誰かが触れた後があるなど、到底、科学的に意味のある実験とは言えない状況が山積。確かに説明できない不思議な事例も多いのだが、日本がまだまだ科学的にも後進国だった時代の話で、一概に信用するわけにもなあ。 当時の千里眼の超能力者がすべて女性であるというのもちょっと不思議だが、「おどる神様」、「金光教」など、不思議な神秘体験から振興宗教の教祖になったのも女性が多いというのも不思議な符合という気がする。 |