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2004/03/11 「落合信彦 破局への道」

「落合信彦 破局への道」(奥菜 秀次/鹿砦社)読了。最近は雑誌でもめっきり見かけなくなった落合信彦であるが、今まで巷間で本人の経歴に関して伝えられているのは、おおむねこういう話である。

アメリカのオルブライト大学卒業後、「オイルマン」として世界中をまたにかけ活躍。何本も油田を掘り当てて大成功。アメリカでカラテのマスターだった時の弟子を中心に、CIA、モサド、MI6など、世界中の情報機関のエージェントに知り合いが何百人。ケネディ暗殺の謎を扱った「2039年の真実」が当たった後は有名ノンフィクション作家、国際情報通として名をなす。現在も情報収集に世界を駆け回り、年間に使う情報代だけでも数千万円。だいぶ前だが、ビールのTVCMにも出ていたよなあ。

しかし、この本の著者が主張する落合の実像はこういったものである。

オイルマンとして活躍したというのは矛盾だらけの落合のホラ。離婚した奥さんも、「海外情報機関の知り合いなど見たことも聞いたこともない」と言っている。東京ではホテルの一室を仕事場にしているが、電話するとたいてい日本にいる。取材に同行した編集者も、落合は海外でもほとんどホテルに閉じこもっており、情報機関のエージェントと会っている場面に遭遇したことなどないと証言。自らが収集した情報で書いたと称する本も、欧米の本を好き放題にタネ本に使った切り貼りの盗作に近いものである。と。

この本の大筋は、以前、別冊宝島「陰謀がいっぱい」での落合批判とほぼ同じ。通読した個人的な印象は、やはり落合の実像は、ホラ吹きの剽窃家であったかというもの。ケネディ暗殺を扱った落合の出世作「2039年の真実」が実に面白い本である事に間違いはない。しかし、映画「JFK」を見て、そしてジム・ギャリソンの原作を読むと、落合が書いている事と実によく似ている。ジム・ギャリソンが落合の本を参考にするはずはない。落合が秘密情報源から聞いたとしている話が、どこかの本に載ってたもののウケウリというほうがありそうな話だ。

落合にオリジナルとなった記事を連載させた週刊文春は、結局、この「2039年の真実」単行本化から手を引いている。その理由は、落合が好き放題に外国の文献から盗作しているのではないかという疑念を抱いたからだとこの本には書かれてあるが、確かにそういう印象を受ける。ま、その印象を誰に押しつけるものでもないが。

ただ、この奥菜秀次という人もかなりの粘着質。どうでもよい細かい事に延々とこだわっているのだが、すべてが整理されずに本に詰め込まれており、読み物としてのまとまりがない。地の文章と他者からの引用も判読しづらく、構成もあんまり考えられていない。ついつい個人攻撃に堕してゆく文章も格調がなく読みづらい。悪いがライターとしての実力は、落合信彦よりも格段に落ちる。それが今まで成功していない理由だろうし、おそらく今後、落合のように成功することもあるまい。この本を読んで行くと、落合攻撃の執拗さに誰しも次第に辟易してくるのではないか。奥菜の執筆原動力の大部分は、しょせん「嫉妬」から来てるのではと感じる所以である。

まあ、しかし、30年前なら英語の本を読んで、あちこち剽窃しても大丈夫だったのだろうが、今やネットでいくらでも英語の情報に接することができる時代。落合流の商売もだんだんと成り立たなくなってきてるのだろうな。

余談だが、同じ著者、同じ出版社で「ケネディ暗殺 隠蔽と陰謀」なる本も私の本棚にある。しかし、この本は乱丁がひどい。めくると次に文章が続かないページが延々と何十ページもあるお粗末。いったいどうやったらこんなお粗末な印刷・製本ができるのだろうか。いまどき大変に珍しい「珍本」。記念に交換に出さずに手元に置いてある。出版社の「鹿砦社」も、どうも大した会社じゃないような感じだなあ。