「下山事件〜シモヤマ・ケース」(森達也/新潮社)読了。戦後、まだGHQが日本占領政策をつかさどっていた頃。初代国鉄総裁、下山定則が常磐線の線路上で轢死体となって発見された。検死を担当した東大法医学教室は、轢断死体に生活反応がなく、現場に血がほとんど流れていないことから死体となった後に線路上に放置されたと鑑定。しかし、慶応大法医学教室は真っ向から反対の説を唱えた。死体に大量の植物性油脂がついていたなど不審な点が多々あったが最終的に警視庁は自殺と発表。なぜか急速に捜査班も解散。松本清張の本にも書かれた戦後の怪事件。 この本は、TVディレクターの著者が、親戚に下山事件にかかわった人物がいるという「彼」と出会い、事件解明の謎に挑むノンフィクション。しかし、さすがに事件後50年の距離は埋まらない。謀殺に深くかかわったと見られる亜細亜産業、その中心人物であった矢板玄の名前、キャノン機関など、従来の取材では謎につつまれていたり、イニシャルでしか報道されなかった部分に光りを当てた成果はある。もっとも追求も基本的にそこまで。おそらく謀略は存在した。しかし、もう証明することは不可能。下山事件についていくつか他の本も読んだが、どれも同じような隔靴掻痒部分多し。昔の未解決事件というのは、多分、どれもそういうものなのだろう。 |