そういえば、神戸から帰る新幹線の同じ車両には、福田元官房長官が乗っていた。暑いのにちゃんとスーツにネクタイってのが凄い。政治家と接近遭遇するのは、ロンドン行きのANAで橋本龍太郎元首相夫妻が2列前に座ってた時以来か。 「晴れた日は巨大仏を見に」(宮田珠己/白水社)読了。 日本のあちこちには巨大な仏像が建てられている。といっても、奈良や鎌倉の大仏のような由緒ある歴史建造物の事ではない。現代の金持ちが建ててお寺に寄進したものや、新しいお寺が人集めに建立したり、レジャーランドが人寄せに建てたコンクリートや金属製の巨大仏像。 大きなものでは、身長100メートルを超える仏像もある。この本は全国各地に点在するそんな「巨大仏」を巡った物好きなレポート。著者はこの巨大仏が日常風景に異物として屹立するさまを「マヌ景」と呼ぶ。役に立たない、無駄で珍妙な景色を愛でる心である。林の向こうに聳え立つ巨大仏、アパートの背景にヌッと立っている巨大仏。巨大仏を回りの風景と一緒に納めた写真が多数掲載されているのだが、これが超日常的でまた面白い。 茨城の牛久にある日本最大の巨大仏「牛久大仏」(120m)、淡路島の「世界平和観音」(100m)、石川県にある「加賀大観音」(73m)などなど、日本には実にあちこちに巨大な仏像建築がある。100メートル超えるというとちょっとした超高層マンション並の高さ。牛久大仏は六本木ヒルズの半分あるわけで、神戸ポートタワー(108m)より高い。しかし壮大というか、壮大な無駄というか。ちなみにウルトラマンは身長40メートル、ゴジラが100メートルなんだそうで、牛久大仏はゴジラより大きい。 しかしウルトラマンってのは小さいね。東京に出現しても、カレッタ汐留や六本木ヒルズの4分の1にも満たないとは。ゴジラで半分弱の高さか。これまた迫力ないなあ。 著者の「役に立たないもの好き」の性格が現れたなんとも茫洋とした語り口がなかなか面白い。同行する編集者達も個性的。人生の役にはちっともたたないが、バカバカしくも味わい深い「巨大仏」。いとうせいこう・みうらじゅん「見仏記」のトンデモ版とでも言えようか。「巨大仏」のひとつくらいは話の種に見物に行きたくなるような本であった。 |