「彼方より」(諸星大二郎/集英社文庫<コミック版>)読了。本屋でたまたま見つけた自選短編集。 冒頭に掲載の「生物都市」は、手塚賞を受賞して著者の名を有名にした初期の作品。昔、最初にこれを読んだ時の衝撃は今でも覚えている。映画的な細かいカット割を多用したスピード感。いわゆるエイリアンとの遭遇物だが、遭遇そのものが地球文明と人類の新たな変容を呼び起こすという「異形」の発想が面白い。 最初に著者の作品を読んだ印象は、ちょうど山田正紀の「神狩り」を読んだ時に似ている。山田正紀にはそれ以降あんまり感心した記憶ないのだが、諸星大二郎は「孔子暗黒伝」や「妖怪ハンター」シリーズなど、時にふれてチェックして今でも数々の作品が記憶に残っている。 画のほうは「ヘタウマ」というより「ヘタヘタ」。稚拙は稚拙だが、彼にしかない妙なオリジナリティがある。なによりも現実から遊離した「異世界」を扱うストーリー・テラーとしての着想が素晴らしい。コミックではあるが、よくできたSFでもある。「彼方より」という題名も、この短編集で語られる物語の本質をよく現している。 山間の町のお堂で起こる怪異を描いた「天神さま」、奇妙に懐かしい少年の日の不思議な疎外感を印象的に扱う「ぼくとフリオと校庭で」、お得意の中国伝説に材を取った「桃源記」、あっけにとられるほどの突き抜けた「違和感」が逆に爽快なほどの「カオカオ様が通る」。以前読んだものも初見のものもあるが、著者の卓越したイマジネーションの異才を再確認した1冊。素晴らしい。 |