「心理テスト」はウソでした〜受けたみんなが馬鹿を見た」(村上宣寛/日経BP社)購入して一気に読了。 ロールシャッハ・テスト、矢田部ギルフォード、内田クレペリン。適性検査や精神鑑定などの臨床で使用されているこのような心理テストは、根拠に乏しく、実施してもほとんど何も分からない。実はほとんど使い物にならないテストであることを著者が暴露する本。 導入部分は「血液型人間学」がまったく根拠ない憶測の産物であることから始まる。この部分については既にあちこちで同様の批判がなされており、特段目新しいものではない。確かに血液型性格判断はデタラメである。血液型で性格が違うなどという迷信が通用しているのは日本だけ(最近、韓国でも流行っているらしいが)。欧米でポピュラーな占星術判断についても、統計的な根拠がない、誰にでも通用するコメントが並んでいる、先に内容が刷り込まれて当たっているという予断が形成されてしまうなど、実は同様の批判が行われている。 しかし、ロールシャッハ・テストやクレペリン検査は、心理学者が関与しており、それで飯食っている人もいるようだから、なんらかの根拠があり有効性があるものと漠然と考えていたが、ここまで信頼性ないとは思わなかった。かろうじて極端な異常者だけは、なんとか判別できるように思えるのだが、それは多分面倒な心理テスト無しでも発見できるのではないか。だとしたら、確かにこれらのテストはほとんど何の役にも立たない。 たとえば著者は、公開シンポジウムで行ったロールシャッハ・テスト結果の読解が、どの研究者ともまったく当たっていない事実を取り上げる。そして、参加した3名の女性心理臨床家が結果読解にあたり、やたらに男根シンボルや性的イメージばかりに固執して取り上げる部分を引用した上で、アメリカでロールシャッハ批判を行ったアナスティシの言葉を捧げてみせる。 インクのシミが明らかにするのは、唯一、それらを解釈する検査者の秘められた世界である。これらの先生方は被験者のことよりも自分自身のことを多分多く語っているまあ、しかし、ここまで言われると、うかつにロールシャッハ・テストの読解など公開するものではないよなあ、と思わせられるのであった。専門知識のない一般読者向けの本だが、著者のシニカルなユーモアにあふれた批判が論旨明快で分かりやすい。実に面白い本だった。しかし、本当にこうまでデタラメなのだとすると、なんだかこう一般に言う心理学というものへの信頼が揺らぐよなあ。 |