「鳥居はなぜ倒れない」(清水昭三/彩流社)読了。原爆投下直後の長崎。何もかもが瓦礫と化した焦土に、長崎山王神社の鳥居だけが立っている写真が掲載されている。そしてひとつだけ残る鳥居の更に遠景には、半分が倒壊したが1本足で半分だけ立つ鳥居も。そして広島。これまた焦土となった爆心地に、護国神社の鳥居が屹立している映像。この本は、題名通り、「なぜ鳥居は倒れなかったか」を著者が問う本。 「神社・原爆・天皇制」と副題がある。「倒れない」中に著者は日本の「原精神」のようなものを希求しようとしているのではと思うが、私の粗雑な頭では、著者の詠嘆や飛躍があまりに多い論旨は、はっきりとは読み取れない。もっとも、長崎、山王神社の鳥居写真を見るだけでも価値のある本なのだが。原爆でも倒壊しなかったこの石造りの鳥居は戦後、市道脇に屹立していたのだが昭和34年、トラックが衝突してあっけなく倒壊したのだとか。何にしろ暗示的な話ではある。 |