「美の旅人」(伊集院 静/小学館)、ベッドサイドに長く置いて、時折読み継いでいたが、ようやく読了。 伊集院静がスペインを旅し、名画と画家の生涯を辿る旅行記。写真満載の美麗本。ダリの人生を最後まで支配した「運命の女」ガラ、ゴヤ、エル・グレコ、ベラスケスなどの巨匠を巡って語られるエピソード等も印象に残る。そしてスペイン各地を巡る旅情あふれる文章。ずいぶん前に日本で行った、プラド美術館展の記憶も甦った。 「昼に闘牛を見て、夜に売春窟に行き、翌朝には敬虔に教会で祈る、それが俺達スペイン人だ」と語ったのは、確かピカソではなかったか。何で読んだかはっきりとは思い出せないのだが。 聖と俗、高貴と卑、形而上と形而下、具象と抽象が、渾然となってむき出しに提示されるような作品群。イタリア、フランス、フランドルなどの絵画とはまったく違う、スペイン独特の燃える血を確かに感じさせる絵画。伊集院静の絵画選択が独特で印象的なせいでもあるだろうが、写真を見るだけでも実に面白い。この本を読むと、スペインを旅したくなる。 |