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2005/10/08 「サバがトロより高くなる日〜危機にたつ世界の漁業資源」

「サバがトロより高くなる日〜危機にたつ世界の漁業資源」(井田徹治/講談社現代新書)読了。

ちょっと前に、ワシントン条約でクロマグロ取引規制を検討しているというニュースが流れたが、これについては別途資源保護策を取ることで規制案は正式提案されなかったのだそうだ。しかし、世界の漁業資源は、マグロだけでなく他の様々な魚類も乱獲により全面的な危機に瀕しており、抜本的対策を取らなければ漁業資源は壊滅的打撃を受けるというのがこの本の主張。

昔読んだ、「聞き書き にっぽんの漁師」でも、インタビューに登場する漁師が奇妙に一致して語るのは、昔は魚がたくさん獲れたが今はさっぱり。我々は獲り過ぎたんだという述懐だった。

大西洋でも太平洋でも、クロマグロ資源は減少しているのだが、むしろミナミマグロ(インドマグロ)が絶滅の危機にあると言われているとか。メバチマグロも急速に減少しており、漁獲規制が厳しい大西洋産をインド洋産と偽装して日本に荷揚げする、いわゆるマグロ・ロンダリングまで問題になっているそうだ。船上での冷凍技術が進んだため、獲れたマグロを2年近く船の冷凍庫に保管しながら、世界各地の海にマグロの群れを追う操業が可能になったことによる乱獲。「まぐろ土佐船」 にも出ていた通り。

太平洋系のマサバ漁獲が壊滅的に激減している。資源保護のための漁業規制も始まっているとか。タラ、タコ、イカ、銀ムツ。日本の食卓でもおなじみの魚だが、世界の海で次々に漁獲が深刻なまでに減ってきている。もちろん世界中で獲り過ぎ、食べ過ぎたせいである。食べるほうでは日本も飛びぬけて貢献している。回転寿司はもちろん、ファミレスやコンビニ惣菜に至るまで、そもそも日本ではシーフードの消費が諸外国と一桁違う。

もしも漁獲が期待できないのなら養殖したらどうか。しかし、漁業は農業のようにはゆかない。アジアでの海老大規模養殖は、すでに深刻な海洋汚染を引き起こし、綺麗だった海を死の海に変えている。最近スーパーでも人気の蓄養マグロだが、若いマグロを大量に捕獲した後、蓄養中にかなり死亡させることや、飼料に大量の魚資源を使うこと、海洋環境汚染を引き起こすなど、真のマグロの保護や自然環境保護を考えるなら、考えるところが多いらしい。

地球儀を見ると海は実に広大に見える。しかし全米に生息していたバッファローは人間が狩り尽くしてしまった。漁業で同じことが起こらないと保証はできない。いや、もうすでに起こりつつあるのかも。無尽蔵のように考えていた漁業資源がそうではなかったなら、やはり消費者をも巻き込んで漁業資源の研究と管理を進めなくてはいけないのだろう。まあ、しかし、本当にサバがトロより高くなったらビックリだよなあ。