教文館で購入した「メディアの支配者(上・下)」(中川一徳/講談社)一気に読了。フジ・サンケイグループを支配した鹿内家の栄光と没落を描くルポルタージュ。実に面白い。 戦後の混乱期、鹿内信隆がオーナーでもないのにメディア3社を支配し、フジ・サンケイグループに最大権力者として君臨し、彫刻の森美術館長におさまって、外国要人や日本宮家とも繋がる一大人脈を作り上げた経緯。2代目春雄への世襲と、その突然の死。養子となってグループ最高会議議長として後を継いだ娘婿の宏明。そしてクーデターによる宏明の追放。春雄が2番目の結婚で残した幼少の孫にグループを継がせたいと執念を燃やし、自分の娘婿宏明の失脚に力を貸す信隆の妻。そして、グループから鹿内家を追放しようとするフジテレビ日枝社長の暗躍。まさに「華麗なる一族」を地で行くような権力闘争のドラマ。 2代目春雄は、高校落第してアメリカ留学に行き、ボストン大学も病気で中退。学業にはまったく興味がなく、アメリカでもフジテレビ駐在員が世話役でついて放蕩ばかりしていたらしいが、信隆の後をついでフジサンケイ最高会議議長に若くして就任してからは全権力を掌握して君臨し、グループの業績は最高潮に達する。側近であった当事フジテレビ副社長の日枝は、急死の際には人目をはばからず号泣したそうである。 信隆の娘婿であった春雄と同い年の宏明は、東大出身の興銀マン。春雄の死去を受け信隆の懇請を受けてその養子となりグループ最高会議議長となるのだが、信隆の死の後グループ内での権力確立に失敗し、フジテレビ日枝の仕掛けたクーデターによりグループ内の全ての役職を解任され放逐される。立志伝中の人物が作り上げた権力の維持には、学校の学問とは違う、何か特殊な才能が必要なんだと感じるような好対照である。 |