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2005/10/25 「幼年期の終り」

本屋で、実に懐かしい、「幼年期の終り」(A.C.クラーク/ハヤカワ文庫SF)がたまたま目に留まる。ひょっとして部屋の本棚の奥にでもまだ現存するかもしれないのだが、思わず購入。一気に読了。

この文庫本は、昔、神戸で一度買った。そしてアメリカ駐在時代セミナー出席で2週間滞在したボストンにあった日系古本屋「流石書店」で見つけてもう一度購入した記憶あり。しかし、日本に持って帰ってきたかどうか。少なくとも購入するのは3度目。

出版されたのは1952年。もう50年も前に書かれたSFだが、今でも十分に読むに耐える不朽の名作。人類に宇宙時代が到来しようとした時に地球に降臨した、驚異的な科学技術を持つ宇宙人「オーバーロード」。人類にその姿を見せぬまま行なわれる彼らの監視と統治により、地球には完全な平和と安定が訪れる。彼らの来訪の目的は何なのか。国連事務総長ストルムグレンとオーバーロードの提督カレルレンの奇妙な友情。

そして統治後50年を経て、ようやく人類の前にその姿を現すオーバーロード。ここから物語は一気に疾走を始める。ウィジャ・ボードによる交霊術が明かすオーバーロードの母星。宇宙精神と感応する新たな人類の覚醒。終末の記憶を投影した遠い未来の記憶。地球の滅亡と取れば暗いラスト。しかし、物語の根底にはクラーク独特の未来への明るい肯定と人間性への信頼があり、詩情にあふれた筆致で新次元の存在へと飛翔する人類進化を描く。これは、クラークの渾身の最高傑作だ。何度読んでも素晴らしい。

後続のSF、アニメ、トンデモ本や新興宗教にも大きな影響を与えたに違いない壮大なストーリーと斬新なアイデア。映画化されたと聞いたことがないのが不思議だが、今ならCGを使って原作を忠実に再現できるはずなのだ。「宇宙戦争」をリメイクするよりこっちのほうが叙事詩的素晴らしさがあると思うがなあ。スピルバーグなんかは興味ないだろうか。