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2006/01/21 「サンサル」 / 「吉田健一集成」

雪の朝。昨日の夜、タクシー帰宅する時には、ポツポツと雨が降り出していたのだが。未明から雪に変わったようだ。北日本では大雪の冬だが、東京の雪景色は実に久しぶり。外出予定を変更して部屋でグータラ。

「サンサル」(大田垣晴子/廣済堂)読了。「話の特集」に掲載された、商業デビュー作。イラストと文章を取り混ぜた独特の「画文エッセイ」。ポワンとした温かみあふれるユーモア。世の中の事物すべてに興味を持ち面白がって採集する観察眼。否定ではなく肯定から入る明るさ。ごく初期の作品だが、すでに大田垣晴子は大田垣晴子なのだった。実に面白い。

この中で愛読書に「私の食物誌」とあったのが懐かしく、「吉田健一集成」を本棚から引っ張り出してきた。「甘酸つぱい味」、「舌鼓ところどころ」、「私の食物誌」など、吉田健一の食に関するエッセイを集めた1冊。昔、それぞれ文庫本を持っていたのだが散逸。探してが絶版で手に入らない。Amazonで検索すると、全集に納められているのが判明して購入した1冊。本屋で探しても普通には見つからない。ネットの便利なところだ。

吉田健一は、大宰相、吉田茂の息子だが、ケンブリッジに留学後、日本で文士になった。大酒飲みで高歌放吟し、酔うとラテン語の詩を暗誦したという。ラテン語ができたということは、イギリスではパブリック・スクールから学んだということだろうか。英語には特段のコンプレックスは無いが、ラテン語ができると聞くと、一段上の知識人という感じで、なんとも凄いよなあと思うのであった。

吉田健一のエッセイは、天衣無縫に視点を変える、うねるような文体が実に独特。これが読むとまた心地よい。吉田健一は、「酒を飲むときは、酒に身体を預けて、犬が日向ぼっこをしているような心持で飲むのがよい」と書いているが、彼のエッセイを読むと、日向ぼっこをしている犬のような気持ちになる。不思議な温かみにあふれる文章。