インタビュー集を読むのが好きだ。生身の人間の語りから、フィクションではありえない、現実だけが持つリアルさを切り取って見せる作業。昔読んだ中では、スタッズ・ターケルが好きだった。伊丹十三の「日本世間噺体系」もインタビュー集と呼んでも差し支えないだろう。そういえば、「人間コク宝〜ドトウの濃縮人生インタビュー集」も実に面白かったな。 日本書店で先日「漫画家誕生 169人の漫画道」(中野渡淳一/新潮社)を購入したのも、漫画家169人に経歴をインタビューしたという帯に興味を持ったから。「信濃毎日新聞」に毎週連載されたらしいが、たったひとりで、毎週毎週1名の漫画家をインタビューして記事にするというのは、なかなか大変だったろう。 169名もインタビューした労作だが、私自身はほとんど漫画を読まないので掲載されてる内で知ってる漫画家はごくわずか。名前だけ知ってるという人も含めて、藤子不二雄A、水木しげる、安野モヨコ、日野日出志、伊藤理佐、中尊寺ゆつこ(この人は亡くなったんだね)、倉田真由美、辛酸なめ子、矢口高雄。掲載者の1割にも届かない。それにしても漫画家ってのはずいぶんといるもんだなあ。 名前も知らない漫画家のインタビューを読んでも面白いのは、やはり自分とまったく違う世界を垣間見ることができるから。漫画家は、当然ながら漫画が好きでなった人がほとんど。好きなことを生業にしてやってゆける人というのは、会社勤めサラリーマンから見ると羨ましい限り、しかし、このインタビュー集を見ていると、漫画家というのは案外になれそうな感じがしてくるんだよなあ。何千人に1人の特殊な才能が僥倖でデビューするというより、むしろ漫画雑誌の編集者が使えそうな候補者を発見し、どんどん仕事を与えながら実戦で鍛え、漫画作者として育成してゆくというシステムがすでに完成してように見受けられる。 そして奇妙に感心したのは、作者と作者が描く漫画の登場人物は、不思議に似ている場合が多いということ。作者の写真と掲載された漫画の1ページを見比べるだけでも興味深い。おそらく著者はこの相似に気づいて、一番似てるキャラクターが出ているページを掲載したのではと思えるほど。女性漫画家というと、部屋に引きこもりのオタク系という先入観があるが(失礼)意外と(これまた失礼)美人が多いのにもびっくり。まあ、男性漫画家は、だいたい想定の範囲内という気がするのであるが。 |