「アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争」(バーバラ・スミット/ランダムハウス講談社)読了。 巨大スポーツ用品メーカーであるアディダスとプーマを取材してスポーツビジネスの内幕に迫るノンフィクション。「アディダス」の会社名は、創設者、アディ・ダスラーの名前から取ったとは知らなかったが、そのまんまだよなあ(笑)。そもそもはダスラー兄弟商会として小さな村で靴屋として創業した、アディとルディのダスラー兄弟が仲互いし、分裂して生まれた会社であり、兄のルディのほうが設立した会社が、これまた巨大企業になったプーマだというのも興味深いエピソード。 アディとルディの兄弟は終生反目し合ったが、その後継者達も仲が悪かったのだという。そういえば、日本でもどこか老舗のカバン屋がお家騒動でもめていた。肉親だからこそ、骨肉の争いになるというのも、これまた人生の真実と言えるだろうか。 この2社だけでなく、リーボックやナイキなど、スポーツビジネスにかかわる会社のどんな判断が事業の栄枯盛衰を招いたかが具体的な事例で描かれており、MBAのビジネスケースを読むような興味もわく。アディの跡を継いだ息子の没後、結局のところダスラー家は、アディダスの経営権を手放してしまうのだが、肉親だけによる企業統治が上手くゆかなかったファミリー・ビジネスの実例としても興味深く読める。 この本が描くもうひとつのテーマは、サッカーW杯やオリンピックの栄光の影に隠れた、接待と利権と裏金の世界。商品をタダで提供するだけでなく、金を掴ませて自分の会社の製品を使わせるため、有名選手の出場する大会では、日常的に金の入った「茶封筒」が飛び交う。そしてスーパースターの獲得や協会での利権を巡って繰り返される接待供応と裏金。そんなスポーツ・ビジネスのダーティーな側面を描いているのも面白い点。IOCやFIFAは、やはり権力と金が暗く蠢く伏魔殿だ。 そういえばその昔、巨人の桑田投手を担当していた日本のスポーツ会社の社員が、裏金を渡したり女の世話をさせられたりとまるで奴隷のごとく使われたと暴露本を出したのを思い出した。しかし、やはり外国の会社のほうがスポーツ・ビジネスでは歴史が長く、やることのスケールが大きい。 |