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2007/03/09 「双六で東海道」〜元気な80代もいるんだなあ

新刊が出るたびに、不思議になんとなく買って読んでしまう本というのはあるもので、私の場合だと、丸谷才一のエッセイなどがそのひとつかな。

少々遅れたが、「双六で東海道」(丸谷才一)読了。

古今東西の歴史と文学を縦横無尽に往来して、ゴシップあり、学問的知識あり、雑学あり、戯言あり、興味深い考察ありと、手馴れた語り口ながら、バラエティに富んだ内容のエッセイ。いわゆる「歴史的仮名遣」を用いた独特の語り口は、まさしく落語の名人芸を聞くがごとく、安心して読むことができる。根強いファンがいるのも納得。

ある意味「暇人の清談」であるが、社会科学や自然科学系の類にはまったく何の関心もなさそうな恬淡とした態度もまた、一連の著書に一種独特の雰囲気を与えている。円熟した文学的教養の一種の極致を惜しみなく披露した「雑談」だな。著者はもう80歳過ぎてるのだそうだが、老いを感じない柔軟な知性にはやはり感心。元気な80代もいるんだなあ。いや、元気でないと80まで生きられないというのが正しいか。