今日はお定まりの怠惰な休日。部屋で、ここ3日ほど読み進めていた山崎豊子の「華麗なる一族」を読了。「白い巨塔」もそうだったけど、やっぱり全3巻は長い。
神戸の富裕な一族に生まれて、阪神銀行を頂点とする万俵コンツェルンを引き継いだ主人公の万俵大介が、都市銀行第10位の阪神銀行頭取として、あらゆる権謀術数を使って、亡き実父への復讐と企業家としての野望を実現させて行くストーリーは、一種のピカレスク・ロマン(悪漢小説)とも読める。丹念に銀行や企業の裏面を取材して組み立てられたこの小説は、今から25年以上前に執筆されたとは言え、驚くほど古くなっていない。
政略結婚による、政治家や大蔵省高級官僚との閨閥作り。料亭接待での秘密の会合で決まる様々な陰謀。銀行検査の日程を知るためのMOFへの接待。金融検査官は酒色の接待におぼれて監査評定に手心を加え、金と将来のポストで釣られたノンキャリの官僚は省内の機密書類を持ち出して銀行に渡す。
総会屋への迂回融資を利用した大物政治家への闇献金。日銀から天下ってくる頭取と銀行生え抜きの役員との確執。大蔵と日銀の天下りポスト争い。景気のいい時は無理矢理にでも貸し付けて、金融引き締めになると小資本の倒産などおかまいなしに資金を引き上げる大銀行の冷徹な資本の論理。
なんだか、最近の新聞報道を見ているのと、ちっとも変わらん。小説が古くなってないと言うより、政官財が癒着した腐りきった世界が、相変わらず昔のままに存在していると言う事なんだろう。こういう社会派の小説を女性が書くのも珍しいと思ったら、作者の山崎豊子は元々は新聞記者だったそうだ。まあ、ちょっと文学少女上がりの女流作家とは印象が違う。