「インタビューズ」を少しずつ読む。
1934年に行われた、H・G・ウェルズによる、旧ソ連の指導者、ヨセフ・スターリンへのインタビューなんてのから始まってるから、なかなか重みがある。
当時のスターリンは、左翼系知識人にとっては革命の希望の星であって、このインタビューについても、ウェルズは、偏見を持って、まったくスターリンの真意を理解していない、などと論争が巻き起こったらしい。
もっとも、その後のスターリンは、ご存知の通り、反対者を次々に抹殺する、いわゆる「血の粛清」によって、神格化された専制君主と化し、ソ連を、恐怖によって統治された独裁国家へと変えてしまった。
ブルジョアジー追放の革命の理想も、結局はそれに変えて、ノーメンクラツーラと言う高級共産党員に、莫大な権力と富の集中をまねいただけで、労働者階級の真の開放を目指したロシア共産主義革命の理想は、スターリンの血塗られた手によって裏切られてしまったというのが妥当な評価だろう。
もっとも、スターリンは、このインタビューで、アメリカの政治について語りながら、アメリカの大統領制の本質について、鋭い洞察を見せている。
もし、ローズヴェルトが資本家階級の犠牲によって、プロレタリア階級の利益を図るべく本気に試みたならば、資本家階級は大統領の首をすげかえるでしょう。資本家は言うに違いない、「大統領は来ては去るが、資本家は永遠に不滅だ。もし、あれこれの大統領がわれわれの利益を守ってくれないのであれば、新しいのを見つけるまでだ。大統領はいかにして資本家階級の意思に抵抗できようか。」
スターリンは1934年の段階で、「JFK暗殺は、ベトナム戦争継続を望む軍産複合体による大統領のすげかえ、すなわち闇のクーデターであった」という『オリバー・ストーン史観 』と、結局同じ事を言ってるわけですな。ニクソンについても、ウォーターゲート事件は、用済みになったニクソンの首を挿げ替える為に、アメリカの影の権力、スーパーパワーが仕組んだ陰謀だった、と言うのも、根強くささやかれている説だ。
やはり、スターリンは、権力掌握の一種の天才であって、他国の政治についても、その権力の構造、それを動かす力学を冷徹に見据えていたに違いない。こういう政治的天才、一種の怪物は、アメリカ人に生まれていても、違った政治信条のもとで、なんらかの権力の座についただろう。いやいや、ひょっとしたら大統領にさえなったかもしれないな。あるいは、アメリカ政治経済を陰であやつって、大統領の首をすげかえる黒幕にか。