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1999/04/17 「ビル・ゲイツの罪と罰」

昨日は日記をアップした後、「ビル・ゲイツの罪と罰〜私がマイクロソフトを辞めたわけ〜」(マーリン・エラー/ジェニファー・エズトロム・アスキー刊)を読了。

ペン・ウィンドウズのプロジェクト責任者を勤めた元マイクロソフトの技術者、マーリン・エラーがマイクロソフトで働いた実体験からその内幕を語るというもの。

以前に読んだ、「シリコンバレー・アドベンチャー」という本は、ジェリー・カプランという技術者がシリコンバレーで立ち上げたペン・コンピュータの会社、「GO」を巡るノンフィクションだったが、この本の著者、エラーのやっていた仕事と妙な因縁がある。

この「GO」という会社は、キーボードをまったく使わずに、画面にペンだけで入力するノートブックPCを開発する会社だったが、ベンチャーキャピタルから70億円以上の資金を集めながらも、マイクロソフトには邪魔され、アップルは自社でニュートン・プロジェクトを立ち上げ、結局、孤立無援で開発が遅れに遅れ、ついに製品を出荷できずに倒産した。

で、この本の著者、エラーがマイクロソフトで行っていたのは、ウィンドウズに依存しないペン・コンピュータのコンセプトを潰すために、ウィンドウズに手書き文字認識機能を組み込む「ペン・ウィンドウズ」プロジェクトだったわけだ。

2冊を読み比べてみると、なかなか面白いが、興味深いのは、実に用意周到にライバルを蹴散らしているように見えるマイクロソフトの内情が実に混乱していることだ。ビル・ゲイツの指示は常に気まぐれに見えるし、周りの幹部は、他人の意見にまったく耳をかさない、この怒りっぽい暴君に、自らのアイデアを売り込むことだけに腐心している。

内部の権力争いによる人事の混乱、頻繁に変更されるトップの方針と、管理不在のプロジェクトの迷走は目に余るばかりだ。あれでは、ウィンドウズOSが、どんどんメモリばかり食う、もはや誰にも手のつけられない巨大な恐竜のようなゴミの塊になって行くのは無理もないような気がする。

もっとも、この著者がマイクロソフトを辞めた理由は定かではないが、どうも、昇進を体よく断られたのが原因のようにも読めるだけに、著者のマイクロソフトに対する評価そのものは、ある程度割り引いて受け取る必要はあるだろう。