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1999/06/29 「フランス人 この奇妙な人たち」

昨日は早帰りしたので、帰りに買った「フランス人 この奇妙な人たち」 (ポリー・プラット)を読んだ。

この本が面白いのは、アメリカ生まれでパリに長く住む著者が、フランスでの暮らしに悩むアメリカ人、ドイツ人、日本人などから異文化対応セミナーで色々と聞いたフランス人やフランス文化に関する感想を英語でまとめた本の翻訳であること。

日本人が書いた外国紹介物では、日本との相違だけに着目するあまりに、その国だけではない欧米全体に共通する風習・文化と、その国特有の風習・文化との切り分けがゴタマゼになっているものが散見されるのだけど、これはそもそもアメリカ人が書いただけに、アメリカや北ヨーロッパ人の視点から見た、ラテン系のフランス人文化の違いが実によく描かれている。

ちょうど、映画「パルプフィクション」冒頭で、アムステルダム帰りのトラボルタがヨーロッパとアメリカの違いをあれこれと語る、ああいう感じで読むと実に面白い。

見知らぬ人にはニコリともしないフランス人の無愛想さだとか、オフィスはいつも暗くてドアというドアは全部閉まっているだとか、郵便局で後ろの奴が息もかからんくらいに接近して並ぶ、などなど、フランスに住むことになったアメリカ人の驚きが書かれているのも面白いが、やはり本を読み進めて興味深いのは、フランスの社会構造そのものに触れた著者の分析だろうか。

徹底した個人主義。利益を上げるよりも論理的、技術的にすぐれたものを作ろうとする企業風土。個性を伸ばすより、社会に生きる論理を叩き込もうとする厳しい教育。エコール・ポリテクニークを頂点とする、まるで中国の科挙が現代に甦ったかのごとき学歴至上主義。階層間の移動性に欠けた厳然たる階級社会と、その頂点に君臨する、高等専門学校で徹底的に数学と論理を叩き込まれた社会の支配層エリート達。

日本と同じような面もあるが、日本とはやはりとてつもなく遠い国であるとも思える。

もっとも、ひとつの国民性というものをごく単純な割り切りで分類するのは、やはり無理が生じるもので、この本の中身についても、丹念に読むと色々な矛盾や自己撞着があるが、それは大きな傷ではない。むしろこの本を読むとフランス人が好きになる。それは著者のフランスへの愛着が感じられるからだろう。

普通に読んでも面白いが、アメリカで暮らした経験があると、米仏の違いに驚きの連続で、興味は倍加するなあ。

日本人は、よくひとまとめに「欧米」というが、その中ですらこれだけ違う。アメリカとイギリス、イギリスとドイツだって、細かく見るとずいぶんと違うだろうなあ。月並みだけど、世界はやはり広い、そして驚きに満ちている。