昨日の夜は、「四千万人を殺したインフルエンザ〜スペイン風邪の正体を追って〜」(ピート・デイヴィス・文藝春秋)を読了。なかなか面白い。
1918年に全世界に蔓延したインフルエンザは、「スペイン風邪」と呼ばれ、全世界で四千万人(?)が死んだと推定されている。インフルエンザが、何故、時折大流行するのか、時として致命的に悪性のウィルスが発生するのは何故か、研究者も明確な回答を持っていない。
インフルエンザは、自ら遺伝子間の組替えを行うことによって刻々とその性質が変化してゆく。そもそもは野生のカモの内臓に住みついていたウィルスが、なぜ、豚やヒトにも感染するようになったのか、その経緯についてもはっきりとは分かっていないのだ現状なのだそうだ。血液に残る抗体の痕跡をたどることによって、多くのインフルエンザの発祥地は、ヒトと豚とアヒル(家禽化されたカモ)が同居するように暮らしている中国南部だと唱えている学者もいるらしい。
大部分のインフルエンザは、老人や身体の弱った人以外には致死的なものではないが、「スペイン風邪」や「アジア風邪」と呼ばれたウィルスは悪質で、肺をまるで血みどろのゼリーのように変えてしまい、他の臓器にも進入して増殖していた形跡があるのだという。
空気感染して伝播してゆくという意味では、もしも1918年と同様な致死的影響を持つインフルエンザ・ウィルスが流行したら、HIV(エイズ)よりもずっと恐るべき疫病ということになるだろう。わずか80年前の日本でも、38万人が「スペイン風邪」で亡くなっている。死者の数だけでいうとHIVどころの騒ぎではないなあ。
現代では、空気感染するウィルスは、航空機によって、速やかに全世界に移動してゆく。伝染の早さは1918年の比ではないだろう。そして、インフルエンザの感染には、特効薬は無く、研究している科学者達にも、昔のような悪質なインフルエンザが流行しない確証はまったくないのが現実だ。
そういえば、テリー・ギリアム監督の「12モンキーズ」は、遺伝子捜査で作り出された悪質のウイルスによって世界が滅亡する映画だった。小松左京の「復活の日」もそうだ。誰もがたんに風邪をこじらせたと思ってるうちに、致死性のウィルスは全世界に蔓延し、世界は死を迎える。 今年の冬は、インフルエンザは流行するだろうか。う〜ん。なんだかこんなことを書いてたら、喉がむずがゆくなってきたような気がする。セキも出てきたぞ。 |