昨日は飲み疲れを癒すために一日中ゴロゴロ。先週月曜のNHKスペシャル、「コンクリート高齢化社会への警告」を録画しておいたのを見たのだが、これがなかなか面白かった。阪神大震災の時に崩れ落ちた建物の中には、明らかに欠陥・手抜き工事と判明した構築物があり、最近になって、山陽新幹線のトンネル内コンクリート剥離や欠陥マンションなどが注目を浴びている。
特に東京オリンピック直後の高度成長期に粗製濫造されたコンクリート建築物は、それ以前の建物よりも急速に老朽化が進んでおり、21世紀初頭には使用に耐えなくなるコンクリート建造物が続出するのではないかと言われている。この急速な社会資本の消滅、「コンクリート高齢化社会」を迎える対策はできているのかを問うドキュメンタリー。
岩波新書で出た「コンクリートが危ない」の著者、小林一輔・東京大名誉教授(コンクリート工学)が番組にも登場していたが、この本もベストセラーにもなったから、社会的に関心が高まっている問題でもある。
コンクリート老朽化の話を読んで面白いのは、高度成長期に粗製濫造したビルや構築物は確かに急速に老朽化しているのだが、関東大震災後に建てられ、3/4世紀を経た同潤会アパートなど、それより古いのにまだ使える状態にあるコンクリート建物も多々あることだ。
コンクリート構築物の寿命は、コンクリート打設の時の職人の「気合」によるのだという説がある。同潤会の場合は、日本初のコンクリート共同住宅の建築という高い目標を持って全国から優秀な職人を集め、「気合を入れて」コンクリートを打設したから持ちがいいというお話。そういう職人はもう日本にいないんだろうか。
逆に、明らかに「気合の入ってなかった」高度成長期の現場では何が起こったか。生コンに規定以上の水をシャブシャブに入れて打設しやすくしたり、現場のゴミを手当たりしだいにコンクリに蹴り込んだり、鉄筋も、どうせコンクリ打てば見えやせんと、入れなかったり手を抜いたり、川砂が手に入らないと、洗ってない海砂をそのままぶち込んだり。すべてとは言わないにせよ、建設ラッシュで納期に追われていた、モラルの低い現場では、空恐ろしいデタラメを平気でやっていた。
これは別に推測ではなく、当時の関係者の証言や、阪神大震災で崩壊したコンクリ柱や最近の欠陥マンションの調査で、すでに明らかになった事実である。コンクリートの内部というのは、実際に壊れてみないと本当のところは分からないから始末に悪い。
もっともゼネコンの宣伝では、現在では現場管理がしっかりしており、そんな手抜き工事はありえないということらしい。しかし、本当にそうだろうか。
昨日のNHKの番組では、すでにコンクリート老朽化の問題が20年以上前から問題になっていた「コンクリート老朽化先進国」アメリカ(←ま、アメリカはなんでも先進ですな)の事例が紹介されていた。
むこうでは、ある程度以上の規模の建物を建築する際は、第三者機関から派遣された、コンクリート工事を検査する外部のインスペクターのチェックを受けることが義務づけられており、このコストは建築費の3%に及ぶ場合もあるらしい。
インスペクターは、コンクリ打設の現場に立ち会って、鉄筋工事やコンクリ打ちを指導したり、納入された生コンの品質や水分量の検査をしたりして、コンクリート工事に伴う手抜き厳格にチェックしている。逆に言うと、他人が見張らないと手抜きするから法律として第三者がやってるのである。
日本の場合は、これは現場監督の仕事だというが、アメリカ人は外部の人間が見張らないと手抜きするが、日本の建築現場では、身内の現場監督がきっちり監督してるのだろうか。現場のモラルにもよるだろうが、実際に手抜き建築なんかが存在することを見聞きすると、どうもアテにならんような気がするなあ。 世界に冠たる土建国家ニッポンで、きらびやかにかざりたてた巨大なコンクリート建築物が、数十年もしないうちに次々と崩壊してゆくというのは、なんだかうすら寒い悪夢である。もっとも寿命が長すぎても建替えの注文がこないから、ゼネコンも困るのだろうけど。 |