今週の週刊新潮の「夏彦の写真コラム」は、「勘定 会計 おあいそ」。 「60過ぎた友人が、勘定のことを”おあいそ”というので、歯が浮いていたが、このごろは平気になった」と書かれている。「おあいそ」というのは、店側が使う符丁で、お客が使うのはおかしい、という説がある。しかし、あまりにも人口に膾炙した言葉だけに、時々ウッカリ使ってしまうのも事実なんだなあ。 では、山本夏彦は、どう言うのかというと、「帰る」、あるいは「勘定」なのだそうだ。いきなり、「帰る」というのも、因業ジジイ風で、なかなか味がある。もっとも、ジイサマにならないと使いこなせない気がするが。覚えておいて、ジジイになったら使おう。寿司屋のカウンタで、いきなり「帰る」というと、店側はちゃんと勘定してくれるわけである。いいなあ。ははは。 私の場合をふりかえると、寿司屋で勘定を頼むなら、「どうも、ごちそうさまでした」と言うか、あるいは、「では、お勘定を」だろうか。 寿司屋というのは、ワリと符丁の多い業界だ。やはり客の面前、カウンタで「サラシ」の商売であるから、どうしても店側の隠語が多くなる。そして、どういうわけか、客のほうも、半可通が得意になって寿司屋の符丁を使う習慣があるのだなあ。 「シャリ」とか「ガリ」とかは、いわゆる専門用語というところだろうか。お茶のことを「アガリ」というのは、本来は店だけが使う言葉で、客が使うのはおかしいと言う人もいる。新橋「しみづ」では、お客が「アガリちょうだ〜い」と頼むと、店側が、「はい、XXさんお茶です」と応答する。やはり、そういう業界特有の符丁を得意になって使うのは、カッコ悪いと感じるのはそういう時だ。 もっともネットでの言論をみるに、客側が符丁を使うのは本来カッコ悪いという例で、「醤油=ムラサキ」を例に引く人が必ずいるのだが、実際の人生で醤油のことを「ムラサキ」と呼ぶ人に私自身は会ったことが無い。実体験に基づかないで生半可な言説をするのもカッコ悪いと思うのはそういう時だ。 |