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2004/10/31 ビンラディンの応援演説

バグダッドで見つかった惨殺死体が、拉致された香田さんのものだと政府が確認。最悪の結果であるが、遺族は「みなさんに迷惑をかけて申し訳ありません。ありがとうございました。イラクの人たちの1日も早い平和を願っています」とのコメントを発表。どれだけ断腸の思いでこの冷静で立派なコメントが書かれたか。想像することすらできない。本当にお気の毒である。

自衛隊は早期にイラクから撤退すべきであると思うが、しかし、それに関しても、アメリカのイラク政策次第。我々は残念ながらアメリカの属国だもの。大統領選挙の結果によっても大きな影響があるだろう。

大統領選挙投票直前のこの時期に、なぜかウサマ・ビンラディンは米国に向けてのメッセージを公開。今日のTVでも本人が出演したビデオが流されていた。内容をもう一度確認したくてネットを検索。BBCのサイトに英文訳が掲載されている。読んで興味深いのは、ビンラディンが9/11テロへの関与を自ら認めていること、メッセージ中の時制からごく最近のものであることが分かること。そして、テロのそもそもの原因をアメリカのイスラエル支援だと明言している点などだろうか。

Oh American people, my talk to you is about the best way to avoid another Manhattan, about the war, its causes, and results. (中略) Let him tell us why we did not strike Sweden, for example. It is known that those who hate freedom do not have proud souls, like the souls of the 19 people [killed while perpetrating the 11 September 2001 attacks], may God have mercy on them.

この部分は明らかに911テロに言及している。「我々は例えばスウェーデンを攻撃しなかった。その理由は(ブッシュ君)分かるかね」と問う部分は、テロの無差別性を否定し、アラブ世界の自由を守る義の戦いという主張だ。

I am amazed at you. Although almost four years have passed since the [11 September] incidents, Bush is still practising distortion and confusion.

「事件からほぼ4年経ったのにブッシュのやることは相変わらず真実を歪め混乱に満ちている」と述べる部分は、このビデオがごく最近撮影された事を示している。ビンラディンは元気に生きている。事件は01年9月であったから、実際には3年と1ヶ月だが、おそらくアメリカ大統領任期とのからみで4年と表現したのかもしれない。

この後、WTCタワーを攻撃する決意に至ったのは、1982年の米国による第6艦隊を使ってのイスラエルのレバノン侵攻に対する支援のせいだと述べている部分も実に興味深い。同時多発テロの根本原因にはイスラエル問題があるのは周知の事実だが、ビンラディンがここまでハッキリと述べたのは初めてではないか。また、攻撃の首謀者と言われるモハメド・アタの名前にまで言及している部分も、同時多発テロの首謀者がビンラディンであることをはっきりと示している。陰謀説に染まった「トンデモ本」の中には、911事件の主犯はビンラディンではないとする説もあったが、やはり虚妄である。

It never occurred to us that the supreme commander of the US armed forces would leave 50,000 of his citizens in the two towers to face those great horrors alone, at a time when they needed him badly. This is because it seemed to him that being preoccupied with the little child's talk about her goat and its butting was more important than being preoccupied with the planes and their ramming into the skyscrapers.

この部分は、「2つの高層ビルで人々が恐怖に逃げ惑い、大統領の助けを求めている時、ブッシュが、子供達と角突くヤギさんの話をするほうが、高層ビルへの攻撃より重要だと考えるとは、我々にも想定外の出来事であった」というブッシュへの揶揄である。もちろん無差別テロを首謀した狂人が他人を揶揄する権利などない。しかし、おそらくビンラディンは、マイケル・ムーアの「華氏9/11」を見ている。そんな気がするメッセージでもある。

ビンラディンはいったい何を考えてこのメッセージをこの時期に公開したか、その真意は計り知れない。ビンラディンのコメントは上記のように、アラブ世界に対するブッシュの対応を批判し、揶揄し、このままではまたテロが続くと宣言するものであった。しかしブッシュへの再三の非難にもかかわらず、おそらくこのビデオは、ブッシュ再選に有利に働くだろう。実際に直近のpollではブッシュが更にリードを広げたとの報道が一部にあるようだ。

そもそも潜在的にブッシュに投票する層の主軸は、アメリカの田舎でトラクター乗ってるような連中である。国際社会でのブッシュの評判や、アメリカのイスラエル政策、イスラエルへの肩入れがアラブの憎悪を呼ぶ悪循環、シオニズム運動のことなどほとんど気にしたこともないだろう。

とてつもない悪者ビンラディンが、まだ生きてたか。じゃあ、やはり戦争では頼りになるブッシュに成敗してもらわないと。そう考える人々は、偉大なる田舎国家アメリカには、大勢いる。もしもブッシュが再選されたなら、このビン・ラディンのメッセージは、ブッシュ勝利を決定づけた皮肉な応援演説として、長く人々の記憶に残るかもしれない。なんだかそんな気がする。