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2005/01/18 中村修二教授の青色LED訴訟


今朝の日経産業新聞に、中村修二教授の青色LED訴訟を担当した枡永弁護士のインタビュー。8億4千万円の和解金は実質勝訴であるとのコメント。上告すれば更に多大な時間を裁判に費やし、中村教授の研究者生命を奪ってしまう。もう一度素晴らしい発明をするチャンスが生まれたし、企業が研究者に正当な対価を支払わなくてはならないという判例にもなった、という意見。

先週行われた和解成立後の記者会見では、原告の中村修二教授が完璧な敗訴であると興奮していた。だいぶ印象が違うが、世間の常識からすると多数意見はこの弁護士と同様ということになるだろう。企業内の研究者の功績として200億円もの支払を命じた第一審の裁判官は、どちらかというと浮世離れした世間知らずで、一般社会に通用する常識にやや欠けていた。

企業の研究開発は成果が出るかどうかが分からない。だから企業会計上でも当期の費用計上が原則。法人税法上でも損金に計上できる。研究の成果が出ようが出まいが、研究者は終身雇用で給料が支払われる。研究に使う設備にしても従事する部下にしても会社がすべて支弁。特許が成立した後で、事業化するための設備投資や必要資金に全額払ってるのも企業である。儲かる特許が成立したら、成果はほとんど研究者の物というのも、ちょっとムシがよすぎるような気がしないでもない。

もしもそれが普通に認められるなら、研究開発が失敗に終わったら、会社がつぎ込んだ資金をすべて研究者の私財をもって弁償しなければならないということにもなりかねない。巨額のリターンを狙うなら、特許を譲り受け、自分で資本を集めて会社を設立し、事業化してIPOによる一攫千金を狙うのが筋だろうなあ。

もっとも、日亜化学工業の対応も、根っからの田舎企業でそもそもオソマツ。「中村教授の貢献はゼロ」だとか、「会社が得た利益はありません。赤字です」とか、度し難いものであったからこじれにこじれた。「特許1件で2万円払って終り」が正しいかと言われると、やはり正当な対価とは言えないだろう。どこの会社でも見直しはしているはずだ。正当な対価を判定するのは実に難しいのが事実だが。

中村教授のなんでも一人で成し遂げたかのような態度も日本的風土では倣岸不遜に写って顰蹙モノであるが、しかし、アメリカではあれくらいで丁度いいだろう。彼の研究者としての真価は元の会社から対価をいくら取ったかではなく、今後の彼の研究成果にかかっている。再び歴史に残るような大発明してもらいたいものであるが。