会社で開催する会議の事務局になっており、終了後の懇親パーティーの段取りまでしなくてはならない。会場の下見と打ち合わせに外出。会場を見た上で、玄関と車の到着位置を確認している時に思い出した。 「この場所は確か、伊丹十三の映画で撮影に使いましたね?」と聞くと、担当のセールス・マネジャーは、「よくご存知ですねえ。昨年の「白い巨塔」でも撮影に使ったんですよ」とのこと。眼に映ると何のヘンテツもない風景だが、四角く切り取った画面でこそ生きてきたり撮影に使いやすい場所があるのだろう。 最近のニュースでは、西武グループのオーナー会社、コクド分割による西武グループ再建計画の記事が目に付く。ワンマン・オーナーが君臨した会社の使用人達が、他所から援軍を呼んできてグループ改革委員会を組織。先日までイエスマンとして滅私奉公していたオーナーの権限を骨抜きにして分割しようと議論しているわけだが、本当にそんな風に上手くゆくのだろうか。 スキームの詳細について承知している訳ではないが、新聞の報道では、西武グループの中核会社コクドを分割し、ボロ会社と西武鉄道と合併する新会社にする。堤義明には、ボロ会社のほうの株を渡して引退してもらい、新コクドと西武鉄道合併と共に金融機関等から新規資本注入を行い、堤家の影響力を削いだ新会社にするというシナリオのようだ。 東京地検が、証券取引法違反で堤義明を立件する方針を固めたとの報道もあった。しかし刑事被告人になったからといって、憲法で保証された私有財産を否定されるいわれはない。「あなたは悪いことをしたからボロ株のほうをあげます。新コクドは西武鉄道と合併して我々が引継ぎます。あなたはスッカラカンになって去って行きなさい」と言って世の中通用するものなのか。 堤義明が何をやったにせよ、堤の持ち物が欲しいのなら、対価を払って購入するのが筋。それが資本主義社会のルールという気がするが。日本でメディアや大衆が声高に叫ぶ「正義」の仮面の裏には往々にして「嫉妬」が隠れている。昨今の堤義明バッシング報道に感じるのはそういうことだ。 最終的にはコクドの株主総会での攻防ということになりそうだが、誰が議決権の過半数を所有しているのか。堤義明が36%を保有する筆頭株主だというのは判明している。グループ経営改革委員会の調査では、2099株のうち1000株以上が実質的株主があいまいな「借名」株だとのこと。多数の「借名」株式は、先代の堤康次郎逝去時に相続税を避けるための方策。実質所有者は堤家だと堤義明実弟らが委員会に手紙を送っている。コクドはそもそも堤家の資産管理会社であったのだから、堤家がほとんどの株を所有していて何も不思議はない。実体は確かにそうなのだろう。 しかし、グループ経営改革委員会では、堤家の実質的所有との主張を認めず、あくまで株主名簿をベースに話を進めて行く構え。もしも予定通りコクド分割が成功すれば、西武帝国、王権の簒奪である。あるいは堤皇帝一族を退位させる無血革命。相続税を逃れるため、多数のユーレイ株主を作ったのがアダとなり、実質支配権を認めてもらえずに王国を失うとしたら、堤一族も愚かであったとう気がする。ま、やはり何事もちゃんと正道でやるのが一番ということに落ち着くだろうか。 |