ノーベル賞が次々に発表される時期。アメリカのニュースでもずいぶん扱われている。まあ、自然科学分野では、アメリカの独壇場だからなあ。経済学賞というのは本来のノーベル賞ではなく、まあ、ひとつ格下のノーベル賞なのだが、これまたアメリカの学者が多い。そもそもアルフレッド・ノーベルが遺言で決めた賞だから、文学賞があって音楽や美術はない。科学でも数学がないなど、彼の個人的趣味が多分に反映されている。 しかし、今年は、文学賞を村上春樹が受賞するのではという観測が日本の一部で盛り上がっているのだとか。それは凄いよな。 アメリカで噂になってるのかどうかニュースを検索すると、Nobel lit prize often goes to unknowns という最近の記事を見つけた。ノーベル文学賞は、18名のノーベル・アカデミー終身会員が選考するのだが、ほとんど誰も知らないようなマイナーな文学者を選ぶことが多いとの論評。誰も知らないの例に、川端康成に次いで日本人二人目の文学賞を受賞した大江健三郎が引き合いに出されていた。なるほど、ちょっと寂しいが、アメリカ人にしたらそんなものなのかねと。 Wikipediaによると、最近は地理的に世界のあちこち持ち回りのような選考もあるらしい。しかし、昔々は、ヘッセ、エリオット、バートランド・ラッセル、ヘミングウエイ、カミュ、スタインベックなど、大御所がさんざん受賞してたんだなあと感心。最近10年ばかりは、いったい誰なのか全然分からない。ギュンター・グラスだけは映画で知っているが。 前記のAPの記事によれば、誰が取るかの賭け率を出してる英国ブックマーカーがおり、そのオッズでは、トルコのオーハン・パムク、シリアの詩人、アリ・アーマド・サイド、ポーランドのリザルド・カプシンスキなどが有力とか。そんなものまでオッズ出すとは、イギリスの博打好きも相当なもんですな。誰一人として名前も聞いたことないが、もしもこの記事の観測が正しければ大変有力な候補ということであろう。村上春樹は、日本人3人目というところが、地理的配分を考慮に入れると大変なマイナスだと思われる。まあ、しかし、結果はいかに。 |
スウェーデン・アカデミーは12日、2006年のノーベル文学賞をトルコの作家オルハン・パムク氏(54)に与えると発表。 村上春樹は残念ながらダメでしたな。しかし、昨日の日記に書いた英国ブックメーカーの予想が見事に的中したのはびっくり。文学の価値を計数化できるとも思えないから、やはりある程度情報が選考委員から漏れてきているのだろう。あるいはアカデミーは受賞する国やら地域を先に限定しており、それが漏れているのか。日本の場合、文学賞はすでに2名貰ってるから、国別のバランスなどという考えが出てくると3人目は難しいかもしれない。 受賞したパムクさんであるが、「異文化の衝突と混合の新たな象徴を見いだした」が受賞理由。なんかよく分からんですな。「わたしの名は紅(あか)」、「雪」などの著作が日本でも翻訳されているのだという。しかし見たことも聞いたこともないなあ。 試みにAmazonで検索すると、確かに売っている。出版社の「藤原書店」というのも聞いたことないが、トルコ関係の書籍に強いのだろうか。世界的ベストセラーとの宣伝文句であるが、定価3885円というのは、あんまり売れることを期待してない本につける値段という気が。もっとも今回の受賞で注文殺到して増刷するかもしれない。 ノーベル賞は、文学賞、平和賞、物理学賞、医学・生理学賞、化学賞の5つがあるのだが、日本は全部門に受賞者がいて、一応、全部門制覇しているのである。今になって考えると、佐藤栄作の平和賞は貴重だった。今後貰える気もしないし。ただ、受賞した時は日本人のほうがびっくりしたという印象であったが。本物のノーベル賞から一段格落ちではあるのだが、スウェーデン国立銀行の基金が設けた経済学賞については、過去一人も日本の受賞者なし。経済大国と言われて長い割に、日本の社会科学系の学問がまったく世界に通用してないというのも面白い話ではあるのだが。 |