向井亜紀・高田延彦夫妻がアメリカ人の代理母を頼んで生まれた子供の出生届受理問題。他人の受精卵で出産する「代理母」なんて制度は、そもそも日本の法律の想定外だから、行政のほうとしても立法措置がなされるなり、裁判の確定判決がでるなりしないと勝手に斟酌して受理する訳にもいかないだろう。本来は立法で解決すべき問題でもあるし、司法判断も結構大変だろうな、などと漫然とした感想を抱いていたら、「卵子提供・代理母出産情報センターによると、海外で代理出産をした夫婦の50組以上が実子として出生届を出して受理されており、不受理となるケースは向井夫妻で2例目」などという報道にびっくり。 もうすでにそんなに受理されているとは知らなかった。なんでも不受理のもう1件は、母親があまりに高齢だったために不審に思われてバレたというのであるが、知らん顔して届けを出せば大丈夫なのかね。出生届には医師あるいは助産婦がサインした出生証明書が必要なのではなかったか。適当にサインしてくれる医者がいるということだろうか。だとすると、向井亜紀の場合は、代理出産が公に報道されていたからバレたというだけ? だとしたら、これまた気の毒というか、役所の窓口も結構エー加減なもんだよなあ。まあ、生まれてきた子供の福祉を考えれば、他人の迷惑になるでもなし、受理を認める方向で解決するのがよいとは思うのだが。 かと思えば、ガンで子宮を摘出した女性の受精卵をその母親の子宮を借りて代理出産なんて報道もあった。実母の子供として出生届を出してから娘夫婦と養子縁組するという。生んだものが親という、普通の想定に照らせば日本での出生届けには問題ないし、養子縁組も合法なのだろうが、戸籍の親子関係が真実かと言われると実は遺伝子的には違うわけで、これまたなんとも奇妙なねじれ現象。 そういえば、先日は、すでに死去した夫の冷凍保存した精子で人工授精した女性が出産というニュースもあった。もちろん死者を父親として出生届を提出することはできないだろうから、これも法律の想定範囲を超える、ある意味薄気味悪い話である。本来、死者の生殖細胞を使った人工授精は医療行為として禁止されているらしい。確かに血縁関係に余計な混乱を生じるから、それはやはりそうだろう。もしも、どちらも既に死亡した男女の精子と卵子を人工授精させ、誰かに代理出産してもらうと、その両親は果たして誰なのか。 SFの世界では、昔から、人工子宮による出産やらクローン技術による人間の再生などおなじみの話題。なかには、DNAスプライシングとクローンによるレズビアン・カップルの実子誕生(ま、この場合女子しか生まれない訳であるが本人達には問題なかろう)などという想定もあったりするくらいだから、なまじのことではびっくりしないが、しかし、結構、現実の世界もSFにある程度追いついてきたなあという印象。ES細胞研究やクローン技術の更なる進展は、再生医療へのある種の福音でもあるのだが、人間の出産関係に応用された場合、もっと凄まじい混沌を世の中に産み落とすことになるなという気がする。 |