日曜日は、日本からお客様を迎えてdowntownなど案内。昔、西海岸にいた頃はアテンドで San Francisco市内を巡ることが多かった。Golden Gate Bridge, Lombard Street, Coit Tower, Union Squere, Treasure Island, Fisherman's Warf, Chinatown。観光には実に適した美しい街で、独自に開発した色んなコースがあった。しかし、考えてみると、Chicago downtownというのは、あんまり車で回るような名所が無いのだよなあ。 一応、手始めに、John Hancock Center 96階の展望台に上がってみたり。何度か来たが、ミシガン湖畔に近いせいもあり、こちらのほうがSears Towerのスカイ・デッキよりずっと眺めがよい気がする。ミシガン湖は確かにまるで大洋のごとし。周りに何もさえぎるものがなく地平線と水平線だらけの、なかなか壮大な眺め。 グラント・パークも、夏場散策すると実に気持ちよいのだが、外はまだいくぶん寒し。公園内のバッキンガム噴水は、夏場など何十メートルも水を噴き上げて壮大で素晴らしいのだが、シーズン外で水がスッカラカンに抜かれている。あとはアドラー・プラネタリウムのほうに回って、湖畔側からのシカゴ市内を見たり。美術館や自然博物館を別にすると、市内はさほどの見所ないなあと、今更ながら。あとは市内ループ、頭上に「L」が走ってるところがよく映画に出てくるくらいか。 火曜日の夜、お誘いを受けてdowntownのコンサートに。ビル内の駐車場に車を止め、夕方のdowntownの街角を歩くと、「Brother、小銭を恵んでくれ」などと紙コップ持って寄って来る、うっとおしい奴などがいて、これはこれで懐かしい。白人ばかりの郊外で暮らしていると危険を察知する能力がだんだん減退してゆく。やはりたまにdowntownに来ないと、都会で生きるということがどういうことなのか忘れてしまう。 Symphony Centerは、ちょうど美術館の斜め向かい。Classicにはサッパリうといもので、恥ずかしながら、こんなところに素晴らしいコンサート・ホールがあるとは知らなかった。20世紀初頭に建てられたのだそうであるが、全米だけでなく世界的にも大変評判の高い、Chicago Symphony Orchestra(CSO)の本拠地。これまた、全然知らずにお恥ずかしい話である。ステージを見るに、バイオリンやビオラ奏者にはアジア系と思しい女性が何名か。パンフレットで確認すると、日本人の名前が何名も。 この夜は、「Silk Road Chicago」と称して、Yo-Yo Maと、「Silk Road Ensemble」を迎えたコンサート。純粋なクラッシックではなく、むしろアジアンテイストを入れたフュージョン的コンサートか。最初の曲で出てきた、どこかモンゴル風の衣装を着た女性ボーカルが印象的。ボーカルというより、何か楽器のような声。ビブラートというより微妙なトレモロが効いている。そう、あれはコンサート・ホールではなく、風の吹き渡る草原に向いた声なのだ。 そして、プログラムに(Pipa)と載っている中国琵琶も興味深かった。ピッキングに使う右手の使い方が面白い。三味線やギターではなく、やはり琴の一種なんだなと思わせる指使い。シングル・ノートだけでなく、コードを弾く演奏技法もある。そして、ギターで言う、いわゆる「ハーモニック奏法」もあるんだなと、あれこれ分かり、中国琵琶の表現力に実に感銘を受けた。その昔、大勢集まって、ベンベケベンベケとユニゾンで引く「中国女子十二なんとか」は、商売の香りを感じて、ひとつも面白いと思ったことなかったが。はは。 Yo-Yo Maの演奏について、何か語れるような人間ではないのだが、チェロ自体のあの深みのある音色は素晴らしい。そういえば、昔々、ディープ・パープルのリッチー・ブラックモアが、「引退したらチェロ奏者になる」などと語ってるのを読んだなあ。ストラトキャスターの中音域の弦を使い、ひっかけた小指でボリュームを調整して、ピッキングの音を消しながらピックアップのボリュームを上げてゆくと、本当にチェロを弦で弾いているような音がする。むしろバイオリンよりもチェロのほうが官能的な音色という気がする。「誰がヴァイオリンを殺したか」なども思い出しつつ。 最後の「Rose of the Winds」は、「Silk Road Ensemble」と交響楽のためにアルゼンチン出身の作曲家が書き下ろした曲。バグパイプ、中国琵琶、尺八、各種パーカッションなど、実に賑やか。めくるめくような、素晴らしいChicagoの一夜であった。駐車場を出たのは10時半過ぎ。しかし、北西に向うI-90に乗ると、道はさすがに空いておりスイスイと。30分ちょっとで帰宅できる。せっかくここに住んでいるのだから、もっとdowntownに出て色んな文化に触れなければとも再度痛感したり。 |