MADE IN JAPAN! 過去ログ

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1997/08/09 ゴルフィング・イン・ザ・レイン

昨日の夜は、会社から日記をアップしてから飲みに。で、帰ってきてから、放ったらかしだった、オリバー・ストーンの「ナチュラル・ボーン・キラー」のビデオをちょいと見たら、結局最後までお付き合い。女主人公のマロニーの悲惨な生い立ちを、アメリカの典型的なTVホームコメディ仕立てで、観客の笑い声までいれて描いた冒頭は、グロテスクだけど、ストーンのアメリカのTVメデイアへの敵意がひしひしと感じられて面白い。(まあ、全体の描きかたも全部そうなんだけど)マロニーのしゃべりかたが、うちの西海岸の受け付けのヒラリーとよく似ていたので、ひとりで大うけ。

TVメディア、政治、軍隊、経済界、そしてその集合の軍産複合体。ストーンはアメリカを支配するスーパーパワーに大変な不信を持って映画を作り続けている。プラトゥーン、JFK、ニクソン・・・。しかし、彼は映画の力だけは信じている。そこがちょっとナイーブかもしれない。もっとも、無骨な映画好きが渾身の力で撮る、そこが彼の映画のみるべき価値だ。

今朝は7時起床で、会社にて上司をピックアップしてゴルフ場へ、あとの2人はうちの営業マンと、取り引き先の出張者。会社から車で20分ほどのCantignyと言うコース。ここは27ホールあって、9ホールづつ、wood、Lake、Hillと別れており、木の多いハーフ、水の多いハーフ、丘陵のハーフと性格を分けているんだと言う。水の多いのはヤだなあ、ボールが無くなるし、と思っていたら、今日は、HillとWoodだそう。

前半はドライバーが全然まったく当たらずボロボロ。しかし、誰が悪いわけでもなく、自分が悪いわけで。いやはや、ゴルフは本当に人格の鍛練になるなあ。しかし、本当にシングル級のゴルフのうまいおっさんが人格がいいかと言うと、(うちの会社にも偉いのでいるんですが)かならずしもそうではないんですな、これが。何かショート・カットがあるに違いない(笑)。でも、ここは本当に奇麗なコースで、スタートも10分おきの為、結構ゆったりと、森や林や池に囲まれたコースを本当に自分達のパーティーだけで歩いているかのように錯覚させる。

朝から空模様が怪しかったが、後半14番のあたりで小雨が降り出した。最初はどうも気になってしかたなかったが、一旦全身濡れてしまうと、かえって踏ん切りがついて、カートは上司にまかせて、なるたけ必要なクラブだけ担いで、雨の中を歩いて行く事にした。まあ、スコアなんてどっちでもいいや。

霧に煙った、鬱蒼たる森林や池を横目に見ながら、濡れそぼった芝生を踏みしめて、小雨に打たれながら歩いていると、なぜか周りの森や木立の、むせかえるような緑の匂いが濃密に嗅覚を打つ。どっぷりと雨を吸って体に張り付いたシャツは、まるで皮膚と化したかのように、この雨の中でさえある微妙な風の動きを伝えてくる。雨に遮られて、もはや、隣のコースの笑い声や、ボールを打つ音は聞こえて来ない。思いがけなく、近くで羽ばたいた野カモの水切り音や、自らが踏みしだいた湿った小枝の折れる音が妙に鋭敏に聞こえ、そして、雨に煙るフェアウェイの彼方には、顔をつたう雨のしずくにさえぎられながらも、降っていなかったさっきまでより、むしろ鮮やかに、グリーン上の白い旗が、やがて飛来する白球を待って、静かにたたずんでいるのだった。

と、なんかカッコよく書いてみたものの、本当は天候の変化を舐めきって、帽子も雨具も車に置いてきたから、こういう事になった次第。

しかし、たまに、傘もなく雨に打たれて自然の中を歩いてみると、いつもの文明に囲まれた生活で失われた感覚がよみがえってくるような気がしていいもんだ。住んでるところから車で20分程度で、そんな事が感じられる自然の中のゴルフ場。これが、アメリカの郊外に住むひとつの醍醐味。

ふと、口語自由律俳句の山頭火の俳句が浮かぶ。「雨のなか、自分を責めつつ歩く」。(自分ではなく己だったかな。自信なし)<そう、ミスショットした時に突然頭に浮かんだ。ははは。