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1997/08/28 アメリカでNO(ノー)と言える日本人になる

今日は晴れ渡ったいい天気。なんだか夏近い陽春を思わせる。<秋だっちゅーに。でも、気温にさほど差があるとは思えないけど、同じ秋の日でも、春のような気がしたり、初秋に思えたりの差と言うのはどこから来るのだろう。不思議だなあ。

本日は、プロジェクトの進捗ステイタスについて、またアメリカ人のチームと終日打ち合わせ。まあ、今でこそ、アメリカ人の中に一人で入っても意見の応酬ができて会議の体をなすようになってきたが、やっぱり最初の1年半くらいは会議が苦痛。なかでも自分の意見を開陳するだけならともかく、質問をされた時。特に否定形の疑問文で聞かれると、私に限らず、日本人はみんな苦しい。

中学の英語で習ったように、否定形の疑問文といえども、ロングアンサーを考えれば、自ずから、否定形でない質問に対する答えと同じであることは頭で分かってはいても、正しい答えが口をついて出るまでは相応の修練が必要。時には「No」が相手への同意を現すという状況にどうも慣れない。

例えば、「Don't you think so?」(そうは思わないよね)と同意を求められた場合。日本語では、「うん、そう思わない」と言うのは普通だが、それに引きずられて、つい「Yes」と言うと、相手に同意せず、「そんな事はない、私はそう思うよ」と取られてしまう。「確かにそうは思わない」と相手に同意するなら「No, I do not think so either」と答えるべきだが、なかなかね。なんかこうスカッと「Yes」って言いたいんだなあ、同意する時には。ま、それは日本人の勝手な理屈だが。

質問以外でも、あいづちを打つ時。例えば、部下が他の部署の人間とのトラブルを釈明しているような場面で、「He is not right.」(あっちが間違ってるんですよ)なんて言った時に、つい日本語に引きずられて、「Yes」とショートアンサーで答えると、聞こえようによっては、「Yes、(He is right)」と取られて、「そんな事はない、むこうが正しい」と聞こえるから、部下は青ざめて右往左往。自分の部下の釈明に同意するなら、「No, He is not right」とあいづちを打ってやらなければいけない。これが難しい。

で、うちの上司もよくやるんだなあ、これ。でかい声で、否定疑問文にイエ〜ス、なんて反対に答えて、(アメリカ人は査定権を持つボスには絶対服従ですから)、みんな、「おいおい、なんだか知らんけど反対してるぞ」とあわてる。で、上司もさすがにアメリカ人の反応からおかしいと悟ってか、あわててノー、ノー。<いったい、どっちなんじゃい。

うちの会社のアメリカ人には、日本人にはなるたけ否定形で聞かないほうがいい、と推奨してるのだが、なかなか言う事を聞かない(笑)。母国語として自由に英語を操る彼らにしてみれば、かえって日本人にだけ否定形を使わないなんてマネは難しいのか。

否定形かどうかに関係なく、会議で、何か質問されて、文意がわからなかったり、相手が変に婉曲で丁寧に話しすぎて構文を見失ったりする事は、今でもよくある。みんな、こっちを見て回答を待ってるのに、何を聞かれたのかよく分からん(笑)。こう言う時には、「I beg your pardon?」や「I'm sorry?」はあまり助けにならない。これらは、相手の声や単語が聞こえなかった時に言う瞬時の聞き返しだからして、質問者がしゃべり終わった後に言うと、むこうもどこの部分が聞こえなかったか分からないし、へたをすると、また同じ文章を繰り返されて、結局、元の木阿弥で分からない危険性が高い。

うちの上司なんかは率直だからしきりに「I don't understand」を連発。しかし、これを連発するのも、なんだか相手に阿呆だと思われないかと、ちょっとためらいが。

しかし、黙ってても事態は改善しないし、毎回毎回、質問の意味をもう一度話して下さい、と言うのもねえ。ひとつの策は、攻撃は最大の防御なり。逆に質問者に質問し返す。「尋ねたいのはこっちである」作戦(笑)。

「Well、Do you really mean 〜?」(では、実際あなたのいいたい事はこういう事ですか)と、今までの流れは分かってるから適当にカマをかける。そうすると、「そう、聞きたいのはそういう事だ」とか、「いや違う」とか、少なくとも別の表現で返事が来るので、だいたい次の展開に結びつく。ただし、話の流れが最初から分かってなくて、とんでもないカマをかけると、「あれま、こいつ結局何も分かってないや」、とかえってみじめな目に会うので十分な注意が必要。ははは。

否定形の疑問文にしても、馬鹿ていねいな表現であいづちを求められたり、付加疑問文を付けられたり(余計な事すんなっちゅーのに)されると、時折混乱して、あれ、yes/no、どっちだろ、と思う時もまれにはあり。その場合は、yes/noで答えずに、「Well、maybe, I agree with you」(そうね、まあ、あなたの意見に同感です)と逃げたりして。なんだかずいぶんセコイ策ばかりだなあ。ま、英語の勉強は日暮れて道遠し。