今日は、会社で、昨日行った「税効果会計の実務」セミナーのテキストを読みながら、もう一度理論面の復習。
国際会計基準の導入の一環として、来年度決算から税効果会計の導入が法制化される訳だが、投資家が企業の決算数値の国際比較をする上では有意義な変更なのは確かでも、実際に決算処理をするほうとしては、どうやって実務に取り込むか頭が痛い。
詳しい理屈はここで説明しても詮無い事なので割愛するけど、巨額の不良債権を有税で償却してる銀行などは、税効果会計を導入すると、移行初年度に自己資本が増大するし、法人税等が繰延べされて当期利益が増える。決算書の上ではいい事ずくめ。本来の強制適用は来年からだったのだが、どこの銀行も特例を使って今年度決算から前倒し導入をするのはその為だ。
もっとも、昨日の講師だった会計士の話からすると、銀行が有税で償却した不良債権にかかる税金の全額を繰り延べるのはかなり困難らしい。法人税務上の貸倒れ損の認定には、かなり厳密な条件が必要だ。先方が手形の不渡りを出しただけではまだ駄目で、会社更生法による整理手続きの開始や、和議申請による債権者の合意などが前提になっている。
いっそ倒産してくれれば、税務上でも過年度の償却の認容が立つため、「将来減算一時差異」と言って、税効果の対象になるのだが、もしも倒産しなければ、税効果の対象とはならず、税金の繰り延べ対象にはならない。税効果の全額適用を会計士が渋ってるのもそこにあるようだ。
それにしても、会社が倒産にまでは至っていないのに、ビタ一文も返済せず、銀行も取り立てをあきらめて債権を償却しようって先はどういうところだろうか。このうちの何割かは、やはり、なんらかの組織暴力と関連がある会社だろう。
そういえば、うちの親父もバブル期にあちこちの銀行から借金していて、今になってあちこちの銀行から取り立てにあっているのだが、ある時、うるさく電話かけてくる某地銀の行員に、「あんたらも、もっと大きいところから取り立てせんかい」と文句を言ったらしい。
天文学的な借金で、借金王として有名だったなんちゃら興産の社長(これは確か今はムショに入ってるんじゃなかったか)のところに返済の談判に銀行員が行って、連帯保証に判をつくように迫ると、この借金王はこう言ったそうだ。
「わかった、そんなうるさ言うんやったら判ついたる。そやけどな、それはワシを怒らすで。ワシは怒ったら何するか分からん男やで。ワシがやれ、言うたらなんでもやる奴もようさんおる」
会社経営者の仮面をかぶっているとはいえ、こういう物言いは、古典的だが効果の立証されている、悪辣なヤー公の手口だ。
銀行員だって会社に命の貸しがあるわけでなし、不良債権の回収が進まないのも無理はない。住友銀行の支店長や阪和銀行頭取も殺されたけど、あれは「取り立てするとこうなるぞ」という暗黒の暴力装置からのメッセージだったんだな、やはり。
|