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1999/11/14 社葬がやってくるのだ

本日はのんびり起床。昼食を取ってから2度寝したら、悪夢にうなされる。しかし、悪夢の常として、起きてみると、どんな夢だったかは覚えてないのだよなあ。

総務のM君が毎日やたらに忙しくしていた。先月末に会社の社長経験者が亡くなって、今度社葬が行われる。総務では「社葬プロジェクト」を組んで、連日色々と打ち合わせをしてるらしい。

去年に現役会長が亡くなって、今年は、その先代の会長が亡くなったということで、2年連続の社葬である。続く時は続くなあ。しかもだいたい寒い時にあるね。

小泉八雲こと、ラフカディオ・ハーンの小説に、確か「人形の墓」というのがあった。2年続けて葬式を出した家では、かならず3年目にも葬儀を出すことになる。だから、2年続けて葬式を出した家では、それ以上続かないように人形の墓を作るのだ、という。

西洋合理主義と徹底した個人主義を、心に傷を受けることなく受容することができなかった繊細なハーンが逃げ込んだアジアの果て日本。貧困と数奇な運命に振り回された迷信深い少女にみせるハーンの深い同情。誰もが貧しかった頃の出雲地方の物語であった。

考えて見ると、もしもこの迷信を信ずるなら、来年、もう一回社葬があるなあ。しかし、うちの会社の社葬対象者で、まだ健在なのは、今の現役社長だけなのである。う〜む。今のうちに人形の墓を作っておいたほうがいいかも。ははは。

そんなわけで、ちょうど先週の昼飯時に、以前の社葬やら密葬の話をしてたのだが、前回の会長の密葬では、同期のT氏は、棺桶をかつぐ係になってしまったらしい。数年前にあった、元会長の密葬の時は、運悪く、私もたまたまかつぐ係になってしまったのだが、「あれはとんでもなく重いよなあ」と思い出話で盛り上がる。

「会社の金だから、一番豪華で重いのを使ってんじゃないかねえ。異様に重い」

「前会長は、麻雀が人一倍好きだったから、麻雀パイのフルセットでも入れたのかもなあ」

「しかし、お棺には、燃えないものは入れてはいけないらしいぞ」

「象牙の麻雀パイなんかは燃えるんじゃないの。プラスチックは環境問題からするとダメかもねえ。」

「しかし、お骨が残るのに、象牙は燃えないだろう。焼き場で拾うことになるね」

「お骨拾う時に、思わずガラガラ掻き回したりしてね。で、つい習慣で積み上げる」

「サイコロ振ったりな」

「ご本人は悠々と、麻雀パイ握って三途の川を渡る」

「しかし、あれだけ好きだったんだから、パイを握らせたら、故人も、むっくり起き上がってきたかもね」

「もうハンチャンやらせろ。勝ち逃げは許さん。ってやつだな」

「担いで会場に入る時に、ポン! なんて棺おけの中から聞こえたら、絶対にお棺を取り落としてたな。わははは」

しかし、まあ、いくら会社のエライ人とはいえ、自分の親戚でもなんでもないと、こういう不謹慎な話に終始するわけである。