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2000/02/09 『歌う不動産屋』、そしてバブルの亡霊が再び

昨日のニュースで、『歌う不動産屋』千昌夫の不動産賃貸会社「アベ・インターナショナルベンチャーズ」が1000億円の負債を抱えて倒産したと聞いてびっくり。いや、びっくりしたのは倒産したことではなくて、まだ倒産してなかったのか!ってことだ。意外に生き延びるもんだなあ。

日本長期信用銀行がメインだったらしいが、生かさず殺さず不動産価格の回復を待っていたのだろうか。貸し手である当の銀行が、国の特別公的管理に移行して火の車だから、千昌夫にも引導を渡さなければならないのは当然だなあ。まだまだバブルの清算は完了していない。

そういえば、総合商社下位のトーメンも、グループ経営再建計画で、関係会社207社の整理・売却で4074億円の損失を処理するとニュースで流れていた。これも不動産子会社からみのバブルの清算だ。

人員も390人減らし1500人体制。これに伴い2000億円の債務免除を金融機関に要請するらしいが、これはほとんど倒産にも等しい状態である。しかし、トーメンの踏み倒しが2000億。千昌夫ひとりの踏み倒しが1000億。千昌夫もある意味エライもんである。<踏み倒しをほめんでもええ!

ま、これで兼松に次いで総合商社の看板を下ろすのはトーメンで決定。その次に脱落するのは、日商岩井とニチメンか。あと10年もすれば、総合商社という看板かかげて残ってるのは、旧財閥系の3社くらいだろう。日本の高度成長と共に飛躍的に取扱高を増やしてきた「大艦巨砲主義」の総本山である総合商社船団の崩壊である。

金融機関については、潰れるところは潰れたし、政府が公的資金投入で、花咲ジイサンのようにツカミ金をばら撒いたので、当面は大丈夫だろう。問題は、バブルに狂奔したツケが回って青息吐息の事業会社に、『連結決算対象範囲の拡大』、『退職給付債務』、『金融商品の時価評価』、『減損会計』という、企業会計上の大変革が、次々に押し寄せてくることだ。

今回の一連の会計基準の変更によって、上場会社は、関連会社に押し付けた損失や、隠していた不良不動産の含み損失をすべて開示しなくてはいけなくなる。株主や投資家に含み損失を隠しに隠して、お化粧するような決算はもう通用しなくなるということでもある。トーメンの発表も、巨額の損失を抱える販売用不動産の減損処理を、監査法人から強く求められ、隠し切れなくなったというのが真相のようだ。

しかし、トーメンの損失は氷山の一角にすぎない。おそらく、今後は、大手商社、ゼネコン、デベロッパーから次々と巨大倒産が続出するだろう。バブルの亡霊は、生贄を求めて、まだそこかしこで踊っている。

「当時のバブル経済の中では、誰も今がバブルだとは思っていなかった」、というのは90年代初頭のバブル経済の崩壊を経験した後で、誰もが決まって述べる後悔だが、そういう意味では、心配なことがある。ひょっとして、今や最盛期を迎えているバブルがあるのではないか。それはアメリカの驚異の株高を演出している、ハイテク・インターネット関連株である。

今や、バブル最大の虚業家とボロカスに叩かれている、EIEインターナショナル高橋治則代表も、当時は稀代の風雲児、時代の寵児であった。銀行は彼の元に日参して、すがらんばかりに「うちから金を借りてくれ」と頼んだのである。もしも、今のハイテク関連株の相場がバブルだとするなら、EIEの高橋にあたるのは、さしずめソフトバンクの孫正義だろうか。

考えてみるとEIEとソフトバンクもよく似ている。巨額の金を湯水のように借り入れて投資する先が、EIEはホテルやゴルフ場や土地、ソフトバンクはハイテク・ネット関連株というだけの違いである。

もしも、金利が上がってアメリカの株価が暴落したなら、実業無きネット株バブルの寵児、孫正義率いるソフトバンクを待っているのは、おそらくクラッシュに近い、かなり悲惨なハードランディングの結末ではないだろうか。

マーケットは常に勝ち馬に乗って走るから、ソフトバンクが乗っかったハイテク・ネット関連株をどのファンドマネジャーも投資に組み入れざるを得ないが、ハイテク株の行く末や、ソフトバンクの将来については、すでに深刻な危機感を持っているアナリストも少なからずいるのである。彼らはハイテク株バブルの崩壊に警鐘を鳴らす賢者だろうか、あるいは天が落ちてくると杞憂する愚か者なのだろうか。

とはいえ、前回のバブルの経験からすると、あれがバブルだったと誰もがはっきりと言えるのは、ハイテク株が暴落して、アメリカ株バブルが終わった後。しかし、それでは遅いのだよなあ。

ひとこと言えるのはこういうことだ。ヤフー株なんか持ってウハウハ喜んでる奴にはそのうち天罰が当たるぞ〜!