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1998/11/04 叙勲・褒賞制度をリストラする

午後のひと休みに、休日中の新聞を会社で見ていると、秋の褒賞の記事が出ていた。見たところ、紫綬褒章(← しかしこれ、IMEで一発変換するなあ)が一番グレードが高いようだけど、赤塚不二夫が貰っている。最近ニュース見てなかったのでびっくり。しかし、叙勲と褒賞ってのは違うのかな? そう言えば、春にもやってるよなあ、確か。あれは何だっけ? と次々に疑問が膨らんで行くのだった。う〜む。


さらに、神奈川県版なんかのマイナーなページまで読み進めて行くと(<そんなヒマあったら仕事せんかいって)黄綬褒章なんて、ちょっとグレードの低い(のかどうか知らんけど)褒賞になると、なんか、訳わからん人が一杯貰っている。

いわく、「なんとかタクシー運転者」、「なんとかトラック会社運転者」。これはいったいどういう人達なんだろう。いやいや、別に運転手だから褒賞貰って悪いなんて思ってる訳ではないけれども、タクシーやトラックの運転手なんて、全国に何万人、いやヘタしたら何十万人もいるに違いない。いったいどういう基準で、ごくごく一握りのタクシーやトラックの運転手に褒賞が与えられてるのだろう、ってのが疑問なんだよなあ。

他にも見てゆくと、職業欄には、調理師、官報販売、郵便配達なんてのもある。農業ってのは、農協の理事長かなんかを勤めた人なんだろうか。保護司なんてのも、考えて見ると、褒賞の定番だなあ。褒賞になるとやたら登場するところを見ると、よほどあちこちにいるに違いない。国勢調査員、なんてのも、普段どこにいるか分からない割には褒賞の時の肩書きによく登場するよなあ。


たまに、離島への郵便配達40年の人が黄綬褒章を貰った、なんて新聞の記事になったりする事もあるし、まあ、授賞する御本人達は、いずれも立派に自分の仕事をまっとうした人達であろう事を疑うわけではないが、実際問題、ここまであれこれの職業を網羅して、本当に褒賞に値する人を選べ出せるのかという疑問は消えない。

こういう叙勲や褒賞は、もともと戦前までは、政治家や公務員だけが対象だったが、戦後だんだんと民間に広がってきたんだと聞いたことがある。確かに政治家、お役人や、大学教授なんかだと、どこの役職まで行けば、どの褒賞が貰えるかってのは、なかなか厳密に決まっている様子が伺える。

民間への褒賞の分配ってのは、やはり、国の各省庁に枠の割り当てがあって、管轄下の業界団体やら、連合会やら組合とかから順繰りに推薦させたりしているらしい。

これが運転手一筋とか、調理師一筋なんて人を選ぶのなら、まあ大して害はないけど、大会社の偉いさんが勲章とか褒賞を欲しがると(まあ、大抵欲しがるらしいんだけど)、秘書室や社長室なんて部署は、関係省庁を接待して情報収集したり、陳情したり、あれこれ奔走して大変らしい。ご本尊は、何もやるはずないもんなあ。

要するに、企業のトップが会社の金で自分の名誉を買ってるようなもんで、中には、勲章もらうまで会長を辞めないなんて本末転倒の輩もいるようだから、国が叙勲制度を通じて民間企業の老害を助長している感は否めない。

最近は、芸能人なんかの叙勲・授章も多いけど、もともと勲章や名誉が欲しくて役者や噺家や歌い手になった訳でもあるまいし、芸能人なんかにもやる必要無いと思うねえ。貰うような人は、すでに誰からもその芸を認められてる大家ばかりなんだし。

こういう制度を維持するだけでも、結構な金も人手もかかるんだから、ひとつ叙勲制度の大規模なリストラをしたらどうだろう。ただし、お役人達は、一度手に入れた既得権益はなかなか手放さないから、『民間にはもう勲章・叙勲は無し』と言う事にする。政治家や公務員達は、内輪で自分達のお手盛りでやってもらったらよろしい。費用も手間も激減、変な陳情や官民接待や民間企業の老害も防げて一石二鳥。よほどすっきりして、小さな政府の実現にも効果があるというもんだ。