昨日のニュースで、OJシンプソンが記念品を競売にかけて4千万円相当の売上になったと出ていた。しかし、そもそも遺族に支払うべき民事訴訟の賠償金はざっと40億円だから、ほとんど焼け石に水だな。
で、今日の夜のニュースには、落札したシンプソンのユニフォームやらトロフィーやらをLAの裁判所前で叩き壊す人々が映っている。OJの刑事裁判無罪に反対する人達が募金を募って、2万ドル相当の記念品を落札、無罪判決への抗議として裁判所前で叩き壊すデモンストレーションをやったのだという。
まあ、ちょっと子供じみた行動で、あんまり賛成はできないが、案の定というか、抗議してるのは全部白人ばかりというところが、この事件が、根本のところでいまだに引きずっているアメリカの人種的対立を思い出させる。
OJシンプソンの元奥さんのニコル・シンプソンとフレッド・ゴールドマンが惨殺されたのは、94年の6月12日だから、4年半以上も前になるんだなあ。判決が出たのは95年の10月3日だから、ちょうど私が西海岸からシカゴに転勤してすぐの頃だった。
あの当時は、メディアの過熱ぶりも凄くて、裁判の模様は連日TV中継されていたし、毎晩、「世紀の裁判」なんて特別番組があり、私もご多分にもれず、連日TVやAOLのニュースで裁判の行方を確認していたのであった。
そうそう、無罪判決の瞬間をTVで見たのは、ちょうど昼飯を食べに、会社の近くの「喜多方」ってラーメン屋(シカゴ郊外にもちゃんとラーメン屋があって、ひところは毎日のように行ってたな)でチャンポンメンを食べてる時だったのは今でもはっきり覚えている。店のTVが遠くて声は聞き取れなかったが、OJのガッツポーズと、殺されたニコル・シンプソンの母親が泣き崩れたのですぐに分かった。それにしてもガッツポーズはないだろうって感じだったなあ。
会社で白人の反応を聞いてみると、判で押したように、「OJがやったに決まっている」「奴は殺人者だ」と吐き捨てるように言う。OJが無罪だなんて言う人にはお目にかからなかったけど、黒人の中では、OJ無罪を信じてるのが多数派だったのだから、違うもんだよなあ。
もっとも刑事裁判自体に無罪判決が出るのは、実はある程度予想されたことではあった。ロス市警の初動捜査の驚くべきズサンさや、担当刑事のマーク・ファーマンが黒人を明らかに蔑視していた人種差別主義者である事が明らかになった事は検察側の信頼性を大きく損なった。被告側では、NYから来た弁護士、バリー・シェックが大変なキレ者で、検察のDNA鑑定の信憑性を突き崩したのが大きかったなあ。
私個人は、やはりOJがやったか、あるいは他の実行犯に依頼したのだろうと思っているが、しかし、OJが本当に犯人だったとしても、色々と腑に落ちない謎が多い。
なぜ、現場に落ちていたグローブがOJの手に小さ過ぎたのか。アリバイがないとはいえ、犯行可能な時間はあまりにも短い。OJの愛車、フォードブロンコに残った血痕は、被害者の血液とDNA鑑定で一致したと検察は主張するが、OJ逮捕後に車を引き取りにいった警察官は血痕に気づかずに保全措置もしていない。被害者は、ほとんど首が胴体から離れる寸前まで切り刻まれてるのに、犯人は返り血をどうしたのか。 刑事事件では、最初の陪審で無罪になるとアメリカでは検察側に控訴権はない。民事裁判では有罪となって巨額の賠償金が課されたが、殺人事件の真相は今後もずっと闇のままだろう。OJが自叙伝でも出して、本当のところを語ってくれたら、すべての全貌が明らかになるのだが。もっとも、実は自分がやってましたなんて告白したら、銃社会アメリカで白人達の憎悪にさらされて、無事に生き延びるのは難しいかもしれないな。 |