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1999/07/18 「東芝サポート問題」について、しょせん野次馬だが、再び感想を書く

さて、もう嫌というほど有名になり、週刊誌や新聞にも取り上げられた「東芝サポート問題」だけど、世の中には親切な人がいて、こういうところに暴言に至るこの事件の推移がまとめてある。

で、東芝がこのA氏のWebページの内容一部削除を求めて福岡地裁に仮処分を申請するなど、事態は混沌としてきて、ヤジウマとして実に楽しい眼が離せなくなってきた。

Yahooや、悪徳商法マニアックスの掲示板なんかでは活発な議論が続いていて、別に私も今更どうってことはないのだが、先日、「週刊朝日」に載った記事を読んで、前回感想を書いた時とちょっと考えが変わった。それを書きとめておきたい。

東芝サポート問題のページを開いたA氏が暴言を受けた「渉外管理室」というのは、総会屋との絶縁宣言を受けて新設した部署で、金目当てのヤクザや、企業ゴロなどへの対応をしているが、同時に、偏執的なクレームマニアなんかの対応もやってるところらしい。

要するに、「客とは言えない特殊な連中」を扱う専門の部署であって、ああいう暴言を吐くのが仕事というか、そういう対応をするのが専門のところなんだろう。あの対応自体は大変な暴言であって、糾弾されてもしかたないが、普通の顧客サポートと一緒に扱って、東芝のユーザサポート全体がとんでもないという感想を持つのは、考えてみるとあんまりフェアではない。

そこを考えると、問題の根は、「東芝のサポートがひどい」というより、「何故、あのページを開いているA氏が「渉外管理室」送りになったのか」、にある気がする。もっとも、本当の事情は、当事者同志でなければ分からない部分だし、当初はこのA氏のWebページにご本人が書いてある事しか分からなかったのだが、東芝の事情説明ページや、新聞や雑誌の報道によって、少しずつ真相が明らかになってきつつある。


で、個人的な感想だが、週刊朝日の記事を読んで、トラブルが大きくなったひとつのポイントは、このA氏が、修理サポートのごく初期の段階で、東芝本社の社長宛にVTRを送りつけたという行動にあったと思える。

この辺は、企業で働いている人と、それ以外の人では若干、受け取り方が違うかもしれないが、私の感覚では、やはりA氏のこの行動はちょっと常軌を逸している。

問題になった、「クレーマーっちゅうの」暴言を受けた後なら分からないでもないが、まず最初に修理に来たサポートからの返事を待ってる段階で、いくら「しびれを切らせた」といっても、いきなり東芝本社の社長宛にVTR本体を送りつけるのが普通の行動だろうか。寅サンの映画に出てくるタコ社長に送るのとは訳が違う、社員数6万6千人の企業の社長宛てにいきなり送りつけて、よく工場の修理部門に届いたもんだと思うくらいだ。

で、社長秘書室からあちこち連絡が行って、東芝社内もドタバタしただろうが、4日後にこのビデオデッキは、一応の修理を終えて本人宛に返送されている。本社から工場に回されたにしては、かなり素早い対応で、そういう面では、社長宛に直接送りつけた効果はあっただろう。

ところが、A氏は、電話で確認した修理の内容に腹を立てて、すぐにこのVTRを、今度は、東芝ビデオプロダクツの「社長宛」に送りつけている。

で、その後、VTRはいったいどこにあるのかとの問い合わせを、電話やハガキで頻繁に(?)入れて、渉外管理室送りとなり、最後には「クレーマーっちゅうの」暴言のオヤジの登場となるのだが、それにしても、電話する時やFAXを送る時には、東芝九州支社やらお客様相談室やら東芝テクノやら深谷工場やら、あちこちの番号を調べて連絡取ってるのに、なんでVTRを送付する時にはいつも社長宛に送付しなければならないのかが、ちょっと理解に苦しむところだ。

週刊朝日の記者もこの点は気になったと見えて当人に質問したのだろう。記事には、「どこに送付したらよいか分からなかったので、社長宛に送ればしかるべき部署に回してもらえるだろうと思った」とのA氏の説明が記されているが、どうにも変わった考えだと思う。


以上を考えると、東芝本社のWebページに掲載された状況説明にある、

「お客様ご本人からの度重なる電話、 FAXによる要請や、VTR本体を一方的に当社及び製造子会社の社長に送付されるというような経過がある中で」

との説明のうち後段の、「VTR本体を一方的に当社及び製造子会社の社長に送付」の部分については事実であると考えていいだろう。週刊朝日の記事の末尾に、A氏本人の言葉として、「できたら宅急便の代金3200円を払ってもらえたら嬉しい」とあるのもこれを裏付ける。

しかし、不思議なのは、A氏本人のページの説明は、頻繁に加筆されているにもかかわらず、何故か、VTR本体をいつだれに送付したかのいきさつについては触れられていない点で、自分を「執拗なクレーマー」と印象付けるような都合悪い事実については書いてないのでは、という疑念が浮かぶわけである。

今週の週刊文春でも、猪瀬直樹がこの事件を取り上げているが、VTR本体の送付のいきさつについては、(おそらく猪瀬は本人に取材したのでは無く、A氏のWebページだけを見て記事を書いていると推察されるのだが)東芝のサポートが持って帰って行方不明になり、A氏が電話したという誤ったストーリーに基づいて原稿を書いている。これは、ひとつにはA氏のページの記述があいまいなせいである。

で、東芝のいう、「特殊なお客さま扱い」したもうひとつの理由は、「度重なる電話」だが、これについても、A氏は自分のページの反論では、「電話のあった日時なり回数なりを公表して下さい。私の方は公表してもらって全く構いません。」と書いてはあるものの、本人自身は、電話をした間隔について述べているのみで、実際、何回苦情の電話をしたのかは言明していない。

ただ、本人がWebに記載した内容だけを見ても、電話したり、FAXしたり、ハガキ書いたり、(VTR本体を送りつけたり)、連絡の取り方と連絡先が一貫していないのは明らかで、これも悪質な嫌がらせに取られた原因のひとつという気はするんだなあ。

電話の回数については、まさか、某掲示板に真偽不明の書き込みがあったように「30回近くかけている」、なんて事はないと思うが、万一それが本当だったら、やはり「特殊な客」だと認定されてもやむを得ないだろう。

とはいえ、音声ファイルでWebに上げられたあのテープの暴言そのものが事実であるのは、東芝が暴言そのものについては認めていることからも明らかで、この点については、東芝も、もう少し真摯な謝罪をしてもいいだろうと思う。

東芝がちょっと危機管理の対応を誤ったのは事実であって、もっと初期にきちんとした対応をしていればここまで問題がこじれることはなかっただろう。変に有名になったから、Web上では、オレもオレもと色々と余計な体験談が集まって、とんだ東芝バッシングが始まってしまった。

ユーザーサポートってのは、もともと製品の調子が悪くて怒ってる客を相手にするのだから、とても難しい仕事であることは確かだなあ。