さて、昨日は日記を早めにアップしてから、DVDで 「大統領の陰謀(All The President's Men)」を見る。ウォーターゲイトスキャンダルを追いつづけ、ついにはニクソンを辞任に追い込んだ、ワシントン・ポストの新人記者コンビ、カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードを、ダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードが演じる。両記者が書いた同名の原作は、ピュリッツアー賞を受賞しており、これはその実話に基づいた映画。
ニクソンが辞任に追いこんだのは、確かにこの2人の記事ではあるが、一連の記事の裏には、当時の政権内部の高官と目される密告者がいた。「ディープ・スロート」とあだ名されたその情報提供者の名前は、今にいたるまで公式には明かされていないが、一説によると、当時のアレクサンダー・ヘイグ補佐官だったといわれている。
ウォーターゲイトに端を発する盗聴や選挙資金の不正流用など、一連の事件で訴追されたニクソンの側近は30名。そのおよそ半数が実刑を受けて刑務所に沈んだ。ニクソンが史上最悪の大統領のラクインを押された所以だが、このニクソンの側近でありながら、その後も政界で生き延び栄達を遂げたのは、キッシンジャーと後に国務長官になるヘイグの2名だけ。
そのヘンリー・キッシンジャーも、実は政権の機密をマスコミに漏らしていたことが、オリバー・ストーン監督の映画「ニクソン」で描かれている。
同じストーン監督の前作、「JFK」では、ケビン・コスナー扮するジム・ギャリソン検事は、「JFK暗殺はクーデターだ」と陪審員に語りかけるが、「ニクソン」でストーン監督が描こうとしたのも、ニクソンは、アメリカを操るなんらかの闇のスーパーパワーのワナにはまり、失脚したのだという推測であったように思える。すなわちこれもクーデターだったのか。
確かに、すでに再選を確実にしていたニクソンが、なぜあの時期に民主党本部を盗聴しなければならなかったか。どうにも理由がつかない。わざと見つかったかのようにもみえる進入犯達のオソマツな手口。ニクソンが失脚し、側近の大部分が逮捕されるなか、政権内部からの密告者2名は生き延びる。ウォーターゲイト事件が、JFK暗殺と並ぶアメリカ政治史の謎といわれるところである。
「大統領の陰謀」が公開されたのは1976年。ニクソン辞任の記憶もまだ新しい、フォード政権2年目の頃だった。しかし、すでに事件からも20年以上が過ぎ、ニクソンもとっくに鬼籍の人。引退後もニクソンは真相を語ることは決してなかった。
そうそう、余談だけど、このDVDの付録に、映画の製作過程を記した「製作ノート」がついてるのだが、読んでてちょっとヘンな記述に気づいた。
↑とあるのだが、この映画には銃撃戦なんてどこにもでてきませんがな。しかも、室内銃撃戦? そう、パッと見て分かった人はすぐ分かったと思うが、この翻訳を行った人は、「Shooting=撮影」を「銃撃戦」と間違えて訳してしまったんですねえ。誤訳がDVDに残ってカッコ悪いですねえ。ここは、室内撮影ができなかったからセット組んだといってるにすぎないのでした。おわり。
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