DVDを買ったままで未見だった「エリザベス」を見る。16世紀後半、カソリックとプロテスタントが激しく対立する英国の女王として即位し、権力争いに翻弄されながら、「Golden Age」と呼ばれる大英帝国繁栄の基礎を築いた「Virgin Queen」 エリザベス1世をモデルにした映画。
ただ、DVDに収録されている人物解説を見ると、フィクションとはいえかなり自由な脚色が入っており、歴史的事実とはずいぶんと相違している。ま、一種のファンタジーとして見るべきなのかもしれない。
インド系の監督にこういう映画を作らせたというのもなかなか興味深いが、陰影に富んだ重厚な色調に衣装もマッチして、宮廷の陰謀と女王の成長を華麗に描いた素晴らしい映像である。まるでレンブラントの絵のような沈み込んだ深い色が、どういうわけか邦画では出ないんだよなあ。
可憐な女性から大英帝国女王へと変身してゆく、オーストラリア出身のケイト・ブランシェットがたいへんに美しい。
壮大な政治ドラマとして描くなら、エリザベス女王の権力が確立してからに重点をおくべきだろう。しかし、この作品は、ひとりの若い女性が運命に翻弄され、陰謀におびえながらも恋を捨て、イギリス女王として生きる運命を敢然と受け入れるまでの話に絞っただけに、ドラマがすっきりとして印象深い作品に仕上がっている。
ただ、本筋とは関係ない枝葉末節であるが、明らかなミス・ショットあり。ファニー・アルダン演ずるスコットランド王妃、メアリーが謀殺された場面。イングランドの謀略を呪って甥が泣き崩れるショットがあるのだが、その瞬間に、死人のはずのこの女優が目を閉じる。
ほんの一瞬だが、はっきり見えてびっくりした。基本的には俳優のミスだが、監督も編集も何度もチェックしたろうに、なんでこういうショットを残したのだろうか。最終のショットにこれを使われては、俳優もちょっと気の毒な気がする。
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