今朝は、久々にゴルフの練習にでも行こうかと思ってたのだが、のんびり起きて、昨日見た「インサイダー」の感想なんぞ日記に書いてアップしてたら、車で外出する気が失せてしまった。
昼食の後で地下鉄で銀座まで。オリバー・ストーン監督の、「エニイ・ギブン・サンデー」を見る。
「Any Given Sunday」とは、「いつものどんな日曜にも」という意味だが、秋から冬にかけて毎週日曜日に試合が行われ、全米を熱狂の渦に巻き込むNFL(National Football League)、アメリカで一番人気のあるアメリカンフットボールの世界を題材にした映画だ。
ストーン監督自身が、「アメリカン・フットボールは日曜に行われる宗教儀式であると同時に、ローマ帝国の剣闘試合のバイオレントなアメリカ版だ」と述べている。アメリカに住んだことのある人で、アメフトを知らなければモグリと言ってもいいほど、NFLはアメリカの大衆に密着した、一種の祝祭とも言うべきアメリカを代表するスポーツであり、すべてのプロスポーツの中でも一番巨大な、アメリカを象徴するビジネスでもある。
「プラトーン」、「7月4日に生まれて」、「ウォール街」、「JFK」、「ニクソン」。オリバー・ストーンは、若い頃はアメリカでは珍しく筋金入りの左翼だったらしい。曲がったことが大嫌いな直情径行の正義漢である彼が、自らの映画で描こうとするのは、いつでも彼が誰よりも愛しそして誰よりも憎んだアメリカだ。
父の死によってプロチームを引き継いだ富豪の若き娘。チームの低迷に苛立ちながら昔の栄光を追い求める初老のヘッドコーチ。医師のモラルよりチームの勝利を優先して、選手にクスリを与えつづけるチーム医。レギュラーの相次ぐ負傷で急遽先発した黒人選手のオーバーナイトサクセスと彼を取り巻く人種差別。
スター選手の富と名声には女達が群がり、バーには一晩5000ドルの高級娼婦。満身の怪我をペインキラー(鎮静剤)で抑えながら、自らの力の衰えと引退の恐怖に怯える名クォーターバック。今度怪我をしたら命さえ危ないと言われながらも、記録と金のために出場にこだわるベテラン。そして試合中の命にかかわるような大怪我。
この映画に描かれているのは、巨大なビジネスと化したアメリカンスポーツの光と影であり、そしていうなればスポーツに投影されたアメリカの縮図でもある。しかし物語は、チームがプレイオフに出場した後半で、ちょうどアメフトの2ミニッツ・ウォーニングのように急速にテンションを上げ、「One for the team」の理想に収斂してゆく。
ヘッドコーチを演ずるアル・パチーノが、天狗になったQBに語る、元大スターだった選手の話が印象深い。
「年老いた今になって思い出すのは、栄光でも、寄って来た女達でも、金でもない。ハドル(攻撃前にQBが全員を集めて作戦を伝える円陣)に集まった懐かしい11人の仲間達の顔だ」
このセリフ自体は、なんともストレートなスポーツ賛歌ではあるが、妙な感傷を交えて描かれないだけに、逆に効果的だった。選ばれた戦士達が、あと1インチでもボールを先に進めようと、フィールドで全員が一丸となって血みどろの戦いをする。そういうアメリカンフットボールの魅力をよく伝えている。
プロフットボールの世界も、あれだけのビッグビジネスであれば色々な陰謀や政治や汚濁にも満ちているだろうが、この映画にはストーンにしては驚くほど毒がない。それはきっと、ストーン自身が、子供の頃から「いつもの日曜日の試合」を待ちわびた、根っからのアメリカンフットボールファンだったからだろうか。
撮影面でも、あのアメリカンフットボールの大男達が全力でぶつかる迫力とスタジアムの興奮を見事に映像化している。長いパスが通る場面などは、実際のNFLの試合のプレイバックでもお目にかかれないような素晴らしいショットで大変に面白かった。
ラスト・シーンのちょっとしたどんでん返しも、いかにもアメリカのプロフットボールの世界だなと、微笑みながら納得できるシーン。もっとも、NFLのことを知らないと、ちょっと興味は半減かもしれない。日本でも、もっとNFLがポピュラーにならないかねえ。少なくとも、日本のプロ野球よりはずっと面白いと思うんだけど。
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