ちょっと前に購入して放置してあった「大映特撮予告篇全集」なるDVDを見る。経営不振でとっくの昔に映画製作を止めた大映だが、昔は特撮物が得意で、結構色々な映画がある。最初に出てくる昔の予告編はさすがに古く、白黒映画の時代。
長谷川一夫や市川雷蔵が動いてる映像を見るのも初めて。なるほど、こういう人だったのかって感じ。山田五十鈴がまだ若いのにもびっくり。物心ついた時からすでにオバサンだったような気がしてたが。ま、なにしろとんでもなく昔の予告編だからなあ。
前半部分はまったく知ってる映画なし。それにしても、あまりにも珍しすぎて、ほぉ〜っとただただ感嘆するのみ。大映も経営が傾く前は元気なもんで、「釈迦」とか、「秦・始皇帝」なんぞという、アジアの歴史を振り返る歴史超大作も撮ってるのである。
「釈迦」で主役の仏陀を演じているのが、本郷功次朗。古い大映映画には、やたらにこの本郷功次郎が出てくる。当時は人気者だったんだなあ。ほとんど知らないけど。「秦・始皇帝」の始皇帝は若き日の勝新太郎。座頭市やる前は始皇帝までやってたとはエライもんである。
予告編でかろうじて記憶があるのは、「大魔人」シリーズと「ガメラ」シリーズだろうか。そうそう、「妖怪百物語」もかすかに記憶があるな。
で、DVDの一番最後に収録されているのが、「宇宙怪獣ガメラ」という1980年製作のガメラ映画の予告編。しかし、まったく記憶にない。ただ、これは予告編見るだけでも価値がある。マッハ文朱がスーパーマンみたいな格好して出てきて、どこかそこらの公園(としか見えない場所)で飛んだり跳ねたりするわけだが、その他の映像は、すべてそれまでの古いガメラ映画の場面をツギハギした使いまわしだ。
よくそんなので映画が一本できたなって気がするが、それだけではない。ナレーションでは、「あの宇宙戦艦ヤマトも銀河鉄道999も登場!」と言っている。しかし、いったいどういうストーリーにしたら、ガメラと宇宙戦艦ヤマトと銀河鉄道が一緒の映画になるのだろうか。
で、予告編の最後のナレーションがまた傑作。「特撮娯楽超大作、今、こんなに楽しい映画は他にはない!」と大言壮語して予告編の締めとなるのだが、予算が無くて、昔のフィルムのツギハギで作った貧相な映画を、ここまで言うとはねえ。そのへんが、逆な意味で「楽しい」。
貧すれば鈍するというが、映画製作会社として断末魔だった大映の広報担当も、真面目にやるのが次第にアホらしくなって、こういうコピーをつけざるを得なかったのではないだろうか。これが旧大映では、「ガメラ」最後の映画だった。もっとも最近はまたリバイバルで新作が出ているようだが。ネットで検索すると、この「宇宙怪獣ガメラ」は、シリーズ最後の珍品として、ガメラオタクには珍重されてるらしい。 そうそう、たしか大映は、経営が悪化して劇場映画から撤退した後は、テレビでまた色々と珍妙なドラマを作ってたんだなあ。なんかこう、よその会社とちょっと違う、妙にピントのボケたところが持ち味の会社ではあった。今となってみると、すべての映画に大映のロゴと一緒に出てくる、「映画は大映」というキャッチフレーズも、日本映画の栄枯盛衰を感じさせて、なかなか味わい深い。 |